●更新日 06/04●
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のんさんの日記 『連帯保証人5〜大切にしたかったはずのもの〜』





前回のつづき


涙と鼻水でぐちゃぐちゃの顔で叫ぶと、私を拉致しに自宅へ来た男が

「まーまーまーまー。」

と、腕をとって再び私を座らせた。

「逃げたあの子に連絡とってよ。じゃないと、あんた二度と帰れないよ。

そんなこと言われても、本当に知らないのだ。

裏切られたのは、この男たちだけではなく、私もなのだから。


「あのね、◯◯温泉ってあるの。知ってる?そこ行こうか。そこで働いて返せばいいから。」


このとき私は、おかしな風に体の力がぬけて、全身の感覚がなくなったのを覚えている。


母の顔が浮かんだ。

おかあさん、ごめんなさい、一生懸命産んでくれたのに…

走馬灯のように、昨日までの平和な毎日が浮かび、そしていい知れぬ悲しみと後悔とがぐちゃぐちゃに混ざって頭を巡った。

もう、声も出なかった。

ただうなだれて、はたはたと涙がこぼれおちた。


そのとき。


「おう、おまえ、なにやってんだ?」


にわかに聞き覚えのある声が降ってきた。そこには知った顔の人物が立っており

「おつかれさまです!」

と男たちみんなが頭を下げている。


「え?何やってんの。どうしてここにいるの。」


あっけに取られているその人物───


────当時水商売のバイトで私を指名してくれているお客様だったのだ!



「千葉さあああん〜!!」


私はソファから立ち上がることもできないまま、手を伸ばして泣きじゃくった。

<組長>千葉さんの計らいで、私は無事に帰ることができたが、本当に奇跡だと思う。



その後、利息こそはずしてもらえたものの、「一応組の金だから」ということで、300万円は私がなんとか完済した。


ともぼーの消息はそれきりだ。


当たり前の話だが、それ以降、誰かの保証人になんてなっていないし、二度とごめんだ。

あの時、自分が一番大切にしていたことは何だったのかと考える。

そのかけ違えが、本当に大切にしたかったはずのものを失う結果になったのだろうと。

写真



のん のん


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