●更新日 05/20●
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のんさんの日記 『連帯保証人3〜借用書〜』





前回のつづき


部屋の中には、4人の、いずれも黒いスーツを着た男たちがいた。

一目して、その筋の者だとわかる。

革張りの柔らかなソファに私たちを座らせると、やがてひとりが奥の金庫から札束をとりだし、私たちの前に運んできた。

あとの3人は、めいめいに何かをしている。

本を眺めていたり、ゴルフの素振りをしていたり、電話をしていたり。

けれど、その神経は決して油断せずに、監視するように私たちに向けられているのが、張りつめた空気の中で伝わってきた。


「じゃあ、これ。300万。で、最初の利息、ここからひくからね」


と、男が300万円の中から、10枚組になっている札束を9つ、ひいた。

すると、ともぼーが声を荒げて


「なんで!?トイチでしょ!?」

「あのな、ねえちゃん。こっちも、まるっきり信用無いあんたに、良心で金貸せるほどの余裕はねえんだよ。何処行ったって同じだ。借りたきゃ、トサンだよ、トサン。だから、90万。な!?」


巨体のともぼーは、声を荒げただけでも息切れがするのだろうか…
私は呆然とともぼーの横顔を見ながら、ともぼーの荒い息づかいを聞いていた。

…どれくらい、そのまま固まっていただろう。

やがて、ともぼーが静かに、


「…わかった。じゃあ、それで、いい」


とぼやくようにつぶやき、テーブル傍らに立ててあったペンを取って、借用書に署名を始めた。


写真


すっかりともぼーに洗脳されていた私ではあったが、さすがに軽くパニックになった。


「え?え?トサンって?なに?どうなるの?」


ともぼーは、借用書に書き込む手元から目を離さないまま、イラつきを隠そうともせずに突き放すように言った。


「だからあ。10日で90だって。計算すりゃわかんじゃん。」


ショックのせいか、自分が連帯保証人欄に署名をしたところの記憶が、

すっかり抜け落ちている。



のん のん


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