●更新日 02/19●


結局、終わり良ければ……4


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「あれっ、バレた?」
背中が凍りつく。
どこでバレた?歩いてきたところを見られたか?まさかあの暗さで?それとももっと前で?どうする?頭の中でいろんな言葉が渦を巻く。


男性はあきらかにこちらに顔を向け、もう一度「おーい」と言った後も何事か喋ってる。
そして、「そこにいるのはわかってるんだ、出てくるまでここを動かないぞ」とでも言うかのように急に地面に座り込んだ。
動けなかった。

目を逸らさず、いつでも動き出せる体勢のまま、息を潜める。
とてつもなく長い時間のように感じたが、実際は数秒だったと思う。
まだ何事か喋ってる男性の耳元に光が見えた。
携帯電話のディスプレイだ、なんと男性は携帯電話で誰かと喋っていたのだ。
一気に力が抜ける。
勝手に勘違いしておいて何だが、この時ばかりは本気で引っ叩いてやりたいと思った。

「早く家入れよ!」と思いながら動き出すのを待つが、男性は俯いたまま一向に動く気配がない。
それもそのはず、男性はそのまま夢の国へ旅立っていたのだ。
10分もしない内に聞こえてきたイビキで状況を把握した私の気持ちを察してもらえるだろうか。
気を落ち着けて待つこと30分、さすがにアホらしくなってきた。


一度、居酒屋で普通に顔を晒してるのでやりたくはなかったが、寒空の下でこの男性に付き合ってる自分が悲しくなったので、直接本人に聞くことにした。
「もしもし、大丈夫ですか?風邪引きますよ。」
「肩貸しますから、家どこですか?」
結局、この男性の自宅は、先程向かった一軒家の隣だった。
玄関まで出てきた男性の奥さんに感謝されつつ、男性宅を後にする。
急いでホテルまで戻りビデオを回収、中身を確認し、相談員に報告する。
無事に不貞の証拠を押さえ、相手の男性の自宅を割り出し調査は成功となった。


調査中にはいろんな事が起こる場合がある。
不慮の事態で、調査員にはどうにもならないことも多い。
ただ、それは依頼者には関係のない話。
途中経過がどうであろうと、依頼者が求めているものは望む事実や証拠、つまり結果である。
もちろん、途中経過も良好で、証拠もバッチリである事に越したことはないが。



探偵 チェイサー



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