●更新日 09/20●


16歳少女手おの殺人、事件の原因は「ひぐらしのなく頃に」?


京都で娘が父親を殺害した事件について報じたサンスポの記事に、この事件と人気ゲームソフト「ひぐらしのなく頃に」との関連についての記述がある。ところが、この記述内容を検証してみると、全く不正確なものであることが判明した。

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ひぐらしのなく頃に(c)竜騎士07

まずは、当該の事件について。サンスポの記事(2007年9月19日)から引用する。「京都府京田辺市で18日未明、娘(16)が警察官の父親(45)の首におのを振り下ろして殺害する衝撃的な事件が発生した。京都府警南署の巡査部長の妻(41)が「自宅で主人が自殺した」と119番。捜査員が駆けつけると、既に死亡した巡査部長を発見、返り血を浴びて立ちつくす専門学校2年の二女が殺害を認めたため、殺人容疑で逮捕した。「お父さんの交友関係が嫌だった」と供述している。」

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この事件についての説明に続いて、記事の末尾には、次のように記されている。「二女は中学の卒業文集で、将来の夢として漫画家などを挙げていた。山村の連続怪死事件を描いたゲームソフトで、コミック化もされた「ひぐらしのなく頃に」に登場する少女が、おのを使用する場面があり、ネット上では事件との関連を指摘する声が上がっている。」

ここで最初に疑問に思うのは、将来の夢として漫画家になることを挙げていたという点が、なぜこの事件と「ひぐらしのなく頃に」とを結びつける根拠になるのか、ということだ。事件と作品がどれだけ類似しているかという点については問わないとしても、どう考えても無理がありすぎる。仮に作品からある程度の影響を受けていたとしても、それが事件の原因となったと結論づけるのは、そう簡単なことではないはずだ。また、漫画家を目指していたから作品にのめりこむ可能性が高いという推測には、何の根拠もない。

もちろん、サンスポも用心しているようで、このような意見を自社の見解としてではなく、ネット上での指摘として取り上げている。そこで、この事件が最初に報道されて以降、サンスポの記事が掲載されるまでに、「ひぐらしのなく頃に」との関連について述べられているものを一通り確認してみた。その結果分かったことは、サンスポの記事から読者が受ける印象とは全く異なる。

おそらくこの記事を書いた記者は、2ちゃんねるのスレッドを見て、「これは使える」と思ったに違いない。ところが、各スレッドに目を通してみると、その多くがネタとして扱っていることが分かる。事件と作品との関連性を本気で論じている意見の方が、むしろ少数派だ。一部のそのような意見は、ほとんど無視されている状態で、議論にもなっていない。そもそも、スレッドが立った時点で「ひぐらしネタ禁止」と書かれているくらいなのだ。その例を、いくつか抜粋してみよう。

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「今日のひぐらしスレ」「全くやったことない俺でもひぐらしってのが頭に浮かんだぜ」「ひぐらし厨の腐女子と聞いて」「何故これがひぐらしになるのかわけわからん」「偽装ひぐらしスレか」「これなんてひぐらし?」「↓ひぐらし禁止」「この事件の娘の愛読書はひぐらしのなく頃にだったと言う。と言うソースが出たらひぐらしの模倣犯 ↓ 漫画、ゲームのせいだ! ↓ ひぐらし発売禁止って流れになり、竜ちゃん涙目。」「予想通りひぐらしのAA貼ってる奴がいてワロタw」

現時点では、事件と作品との関係については一切不明だ。仮に関係があったと考えられるという検証結果が得られたとしても、それは今回のサンスポの報道が正しかったことを意味するのではない。むしろ気になるのは、なぜサンスポがこんなことを書いたのかという点だ。おそらく人気作品と強引に関連づけての話題作りだろうが、過激な描写に規制をかけるべきというマスコミの世論形成が強くなっている時代だけに、他の意図があったのではと深読みされても仕方がないかもしれない。



高橋



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