●更新日 05/11●


オカンヘ


あたしが初めて家出を思い立ったのは、幼稚園の頃。
自殺を考えたのは、小学生の時。
アンタを本気で殺したいと思ったのは、高校生やった。

落ち着きがなく、早熟だったあたしに、アンタは小さい頃から色々と折檻をしてくれた。
手足を縛って風呂水の中に何度も投げ込んでくれたなぁ。
偶然仕事から早く帰って来たオヤジが止めてへんかったら、アンタの手が後ろ手に縛られとったで。

気に入らない事があると、躾と称して、所構わず、誰の前であろうが平気でドツキまわして、よく真冬でも外に引きずり出してくれて。
一度、頭にケリ入れられてあたしが気を失った時の事を覚えてる?
正気に返ると、ケリ入れられた場所に転がされとった。
心配して隣で泣きじゃくる弟のそばで、仁王立ちになったアンタが真上から憎々しげにあたしを見つめてたなぁ。

その時に気がついた。
『コイツ、マジであたしが死んでもいいと思ってる。やり返さんと殺られる』ってね。

身体の大きさがアンタに追いつくと、今度は別の追い詰め方にかわった。
家の中であたしだけを完全に無視し、メシは作ってくれない、洗濯物はあたしのだけ別にする、電話は取り次がない...............

大学を卒業し、逃げるように家を出て結婚して、ようやく理解できた事があるわ。

アンタって、いつまでも女でおりたかったんやね。

それにはあたしの存在が邪魔やった。

初めは、一人娘を可愛がる自分の夫に対して。
その次は、姉と仲のいい自分の息子に対して。
最後は、娘と結婚したかつての不倫相手に対して。

あたし、知ってるんやで。

だから結婚したんや。

ざまーみろ。


←前へ                       次へ→



探偵ファイル




探偵ファイルのトップへ戻る