●更新日 10/30●


レズビアンクラブに潜入〜女バウンティハンター〜


荒木です。



よほど信頼できて頼れる相手でなければパートナーなどは要らない。集中力が散漫になるどころか足を取られてミスが生じるからだ。

キャシー・ピアーズは数少ない女性のバウンティハンターだ。私の恩師であるLAベイルボンズの社長アンソニー・アペロ氏の親友の娘である。

以前に彼女は逃亡者を捕り物の際に取り逃がすという、ハンターとしてあってはならないミスを冒した。そのサポートをした際に彼女のスタンドプレイに悩まされたばかりだったので断りたいところなのだが、再度アペロ氏からコンビを頼まれた。

それは女性のオトリがいなければ出来ない捜査だったからである。

入念に打ち合わせをしてから私は承諾した。

私はプロの世界で生きるハンターとしての初歩的な心得をキャシーに復習させ、そして私と再び組む場合は絶対にスタンドプレイ無しで取り組むよう誓わせたのだ。


獲物は女性でバレリー・ブラドック(32歳)、同居していたレズビアン相手の浮気に憤慨して傷つけ傷害で起訴された。

LAベイルボンズに保釈保障をしてもらい、公判まで釈放してもらったがベイルジャンプ(逃走)してしまった。

バレリーはレズビアンクラブ通いが大好きで、逃走中の身であっても出没する可能性があるとアペロ氏が推理した。

入り込むのが男であれば不自然であり、怪しまれるのは言うまでもない。

キャシーが探りを入れ、もしもの場合に備えて私がサポートすることになった。

賞金は8千ドルだからキャシーと山分けしても悪くない取り分だ。

バレリーが現れそうなレズビアンクラブを数件絞り込んで、とある一軒にキャシーがレズビアンを装って潜入した。

装備は私と交信できる小型無線機と9mm小型自動拳銃ワルサーPPK。

すると、そのクラブにはバレリーが数日前から訪れていたことが判明。

私はクラブの表の車でスタンバイした。

店の中では広めに施されたダンスフロアに、VIPルームは個室に間仕切りされていて、そこでは意気投合したカップルがお熱い抱擁を交わしている。

バレリーを捕らえるためにキャシーはイルミネーション輝く暗がりの店内を探した。

表の車中でスタンバイしている私の受信機のイヤホンからキャシーの声がクリアに入った。


「獲物を発見!」


つづく


荒木



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