●更新日 09/18●


美人女性には気をつけろ(前編)


駅前でティッシュや、化粧品、サンプル商品を配布している人を見たことがあるだろうか。
たまに私が手を差し出し商品を掴むと、配布員がなかなかサンプルを手放さず商品の説明を長々としてくる。大抵そういう時は急いでいることが多いので、私はサンプルから手を離してその場を去る。
渡す気がないのならサンプルを出すな、と毎回のように思う自分がいる。

先日、調査続きで久々の休暇が取れたので書店に立ち寄ってみた。何を買うというわけでもない。
ただ、昔から暇さえあれば書店に足を運ぶほど居心地の良い場所だった。
中に進むとかすかに本の匂いがする。



私は奥の角にある英会話コーナーで立ち止まった。

(探偵もこれからの時代、英語が話せなきゃなあ・・・)

自分でもわからないが、なぜかその時はとっさにそう思った。
前面に出ている売れ筋の英会話本を2冊手にとり、レジへと進む。
妙にやる気を出した私は購入した本を鞄にしまい外へ出た。
すると、書店の出口で綺麗な女性に封書のようなものを差し出された。
私は横目でチラッと見て足を止めた。

『TOEICや英会話の講習が驚きの価格で!』

その女性が配っていた用紙にそう書かれていた。少し迷ったが貰うのはタダ。

(今回はサンプルじゃないし大丈夫だろう・・・)

そう思い手を出すと、女性は用紙を持った手を離さずに「アンケートなのでこの場で書いてください」と言った。



とりわけ急いでいるわけでもなく、英語にやる気を出していた私はアンケートに協力をする。

すると、アンケートを書いている最中に先ほどの女性が、英語がしゃべれるようになったらどんなにすばらしいか、などを力説してきた。その女性が美人だったのもあり、
「自分もこれから英語の勉強を始めようかと思っていたところなんですよ」と返すと、
「これから説明会があるので是非来てください!」と半ば強引に私を隣のビルへと連れ出した。


つづく



探偵T村



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