●更新日 04/16●


海外への逃亡(前編)


債務者に対する素行調査で
「返済日までターゲットが逃げないかどうか監視してくれ」
という依頼は少なくない。
しかもそういう調査だからこそターゲットは高飛びを試みる。

行き先は海外。



探偵を数年続けていれば、そのような状況は珍しくない。

神奈川県に居住していたターゲットは、返済日の4日前、小さな旅行バッグを片手に「新横浜」に向かった。
新幹線のチケット購入時にターゲットの後ろにつく。
行き先は「新大阪」だった。
しかし移動は「新大阪」では終わらない。
「新大阪」で乗り換えた電車から次の行き先を推測した。

「関西国際空港」

「またか」
その状況で思うことはいつもそんなことだった。
関東に居住するターゲットが「成田空港」ではなく、あえて「関西国際空港」を選んだのは警戒心からだろうか。
しかしターゲットからはそんな様子など微塵も感じられなかった。
依頼者とは「新横浜」で一度連絡を取っている。
海外逃亡の可能性を示唆すると。

「いつでもそちらに迎えるよう準備しておきます」

と、慌てた様子で電話は切られた。
そしていよいよ「関西国際空港」に向かっている報告をすると
「すぐ行きます」
と、鼻息荒く電話は切られた。

ちなみに債権額は約7000万円

空港内のレストランで遅めの昼食をとるターゲットを監視しながらふと時計を見た。
東京から向かっている依頼者が間に合うかどうかは微妙な時間だった。
その時点でターゲットの行き先はまだ判明していない。
ただこのようなケースはアジア圏に逃亡することが多い。
この手の調査のターゲットが逃亡先に選ぶ場所と言えば
タイ、シンガポール、バリ
こんなとこだろう。

昼食を終えたターゲットは空港内のショップを歩き回った。
出発までにはまだ時間はあるようだった。
依頼者に連絡をしてから約2時間が経過していた。

東京からスムーズに来れても3時間はかかる。
そんなことを考えていた時だった。

ターゲットがついに動き出した。


つづく



探偵エス



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