●更新日 03/22●


コレクター・ドノビッツの銃弾(後編)


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「スタンリー・ドノビッツ! バウンティ・ハンターだ!」

慌てたドノビッツは私の脇腹にパンチを食らわしてきた。
激痛が走って思わず吐きそうになった。見かけによらず重いパンチである。
私も負けじと獲物の腹部に拳をめり込ませた。
苦しそうに床に倒れ込んだ獲物に手錠をかけようとしたそのとき、ドノビッツの手に小型のコルト自動拳銃が見えた。

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たかが身分証明書のコレクターと油断していたのが間違いだった。
一瞬ドキッとして体内のアドレナリンが逆流した。
すぐに鼓膜が破けんばかりの鈍い銃声がして、私の内股の皮膚を銃弾がえぐった。
激痛が走ったがそれを堪えて獲物の首筋に手刀を降り下す。
ドノビッツは気を失って床でおとなしくなった。

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ミニバーからウイスキーを取り出して口に含んで傷口に吹きかけた。
これを早めにやっておかないと破傷風になりかねない。
さらにタオルを強めに巻いて止血をした。
傷口を焼いたほうが確実なのだが私にはあまり時間がなかった。
銃声を聞きつけて誰かがこちらに向かってきているはずだったからである。

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ドノビッツに手錠をかけて顔に数回ビンタを食らわせて目を覚まさせた。
そして部屋から引きずり出して非常階段から階下へと降りて、フロントを避けて裏口から外へ出た。
タクシーを拾い、郊外のモーテルで降りてチェックインした。傷口を応急処置するためだ。
途中のドラッグストアで買った包帯と消毒液を取り出し、携帯ナイフをよく焼いてから傷口に押しつけた。
今度はヤケドの痛みが脳天をつらぬいた。

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ドノビッツを椅子に縛りつけたまま私は思案した。
問題は獲物をいかにしてアメリカまで護送するかである。
航空機を利用すれば面倒な手続きに直面するかもしれない。
それを避けてスムーズに護送するには陸送がベストだと感じた。
グレイハウンド長距離バスに乗り込み、バンクーバーからシアトルまでの帰路である。
国境のイミグレーションは難なく通過できた。
ドノビッツは私の鉄拳制裁が堪えたのか、逃げるのを諦めておとなしくしていた。
シアトルからは飛行機に乗りロスへと戻った。

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ロスに到着するとその足で獲物を当局へと引き渡した。
ベイルボンズから私に支払われた賞金は5千ドルである。
被弾したのは最大のミスだが悪くない稼ぎだ。

その後、看守から聞いた話しではドノビッツは刑務所の中にも身分証明書のコレクションを持ち込んでほくそ笑みながら眺めているという事だった。
まったく犯罪者というものは懲りない輩である。



バウンティハンター



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