●更新日 03/09●


探偵アンラッキーデイズ(6)



(し……死ぬとこだった……)

どうにか絶壁から這い上がった私は、やむなくシュノーケリングを楽しむターゲット達の撮影を断念した。死んでしまっては元も子もない。
仕方なく崖の上から二人を見張っていると、

シュノーケリングを終えた二人は、近所にあるホテルにチェックインした。

それを見届けた私達は同じホテルにチェックイン。
ホテルのロビーで張り込みをする。


しかしそれ以降、二人が外出することはなかった。


夜が更け、波乱の調査初日は終了した。


(2日目)
ホテルからでた二人は、昨日と全く同じポイントでシュノーケリングをはじめた。
しかし、もうロッククライミングはこりごりだ。
あまりやりたくない手だが、相棒と一緒に観光客を装い、接近しての撮影を試みる。


結果は大成功。
笑顔でシュノーケリングを楽しむ二人の姿を、バッチリとらえることができた。

その後、二人は同じホテルに戻る。
私達は思い切って接近。

ホテルの同じ部屋へ入って行く二人の姿を確認した。
撮影にも成功。もう「同じホテルだけど、別々の部屋に泊った。」なんて言い訳はさせない。


(3日目)
同じく、二人はシュノーケリングにでかけ、帰ってから同じホテルの同じ部屋に宿泊した。
しかし、こちらはもうホテルに泊れない。
理由は簡単。上司の一言。
「もう経費がない。」
仕方なく、ホテルの出入口を見張りながら野宿することとなる。



(4日目)
二人はシュノーケリング。ホテルに宿泊。
私達は野宿。


(5日目)
昨日と同じ。


(6日目)
昨日と同じ。



……っておい。

いつになったら帰るんだこの二人!?

野宿ももう4日目。いいかげん体力的にも限界だ。
たまらず上司に連絡すると、

「ターゲットはあと3日ほど帰らないそうだ」


……クラッ。

思わず立ちくらんだ私の耳に上司が続ける。
「しかし、もう浮気の証拠は十分にとれた。依頼者にも予算の都合がある。
 もういいだろう。終了だ。引き上げて来い。」


(たすかった……)

私は胸をなでおろす。
相棒も、あからさまにホッとした顔。

………………………………………………………………………………………………………………

こうしてアンラッキー続きだった調査は終了した。
つくづく不運な調査だった。
しかし、結果だけみれば、見事ターゲットの浮気の証拠がとれている。
依頼者は喜んでくれるだろう。私達を見舞った不運や苦労を知ることはなくても。

(ま、それを思えば、これってラッキーだったのかな?)

そんなことを考えつつ、私と相棒は事務所への帰路についたのであった。



豊田の探偵



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