●更新日 03/08●
刑事と探偵と妻を探す男(中篇)
刑務所を出所した直後、妻の行方調査を探偵に断られた男性。
なぜかそれを追う、彼を逮捕し刑務所に送った警察の刑事。
男性の依頼を断り、興味本位で刑事たちの後を追う探偵。
男を先頭に、刑事、探偵と続くおかしな行進がはじまったのだが……
最後尾についた探偵は苦々しい思いで刑事たちの尾行を見ていた。
(へっ……たくそだなぁ!)
どう下手なのか、と聞かれると一般の人には説明しづらいのだが、
一言でいうと「ライン取りがなってない」といったところだ。
尾行の基本は「バレないように、見失わないように」ということ。
そのために注意を払って「動線=ライン」を選ばないといけないのだがそれがなってない。
(今にもバレそうで、見失いそう。)
おまけに挙動も不審だ。
物陰に隠れながら、ジグザグに移動している刑事までいる。
(なんのコントだ? それは?)
そして服装にも気を使っていない。
ターゲットにばれないようにしなければならず、である以上、目立つ服装は避けなければいけないのは当然なのだが、一人は印象に残りやすい文字の入ったTシャツを着ているのだ。
(“うみんちゅ”が街中で尾行するな。)
ヤキモキしながら、男と刑事の後をついていくと、
男性は図書館に入っていった。
それを見届けた刑事たちは「やれやれ」といった風情で煙草をふかしはじめる。
(……だめだ、こいつら……)
私は思わず額に手を当てた。
こういう場合、探偵だったら図書館の中まで尾行する。そりゃそうだろう?
建物の中に入ったからと言って、外で待っていたのでは、ターゲットが中で誰かと会ってもわからない。どんなことをしていたかもわからないではないか。
煙草を吸いながら出入口を眺めている刑事は放っておいて、私は図書館の中に入っていった。
続く
KEN
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