●更新日 03/02●
探偵アンラッキーデイズ(2)
「なんなら事務所にくるか? ああ?」
仮称「ダルダル君」は、あくまで“自分達はヤクザ”と主張したいらしい。
しかし、私だって探偵のはしくれ。ヤクザを尾行したことだってある。
ダルダル君が“本職”ではないことは明白だ。
「謝るだけなら5歳児でもできるんだよ! 誠意をみせろや、誠意を!」
(何年前のヤクザだ・・・)
あきれて無反応になる私。
それを見てキレたダルダル君は、連れの男(仮称:ツレ夫君)に言う。
「こいつナメてやがるな。おい、兄貴を呼べ!!」
すぐに携帯電話を取り出して、どこかへ電話をかけるツレ夫君。しかし、
ツレ夫「ごめん。友達、だれもでないや。」
ダルダル「・・・・・・」
そりゃ、こんな早朝に「兄貴役」をしてくれる友達など、なかなかいないだろう。
しかし、それでもダルダル君のインネンは終わらない。
「誠意みせろや、こら!」
「どうもすいませんでした。」(←誠意を込めて)
「謝るだけなら5歳児でも(以下略)」
「じゃあ、どうすればいいんですか?」
「俺から言わせるな! お、今腕が当たったな、暴力か!?」
きりがない。
しょうがないので一旦その場を逃げ出し、車に避難して警察に通報。
その間、ダルダル君と連れの男は、私の相棒にインネンをつけ続けている。
相棒に悪いのですぐに戻ると、再び私にからみはじめる。
もはや、ダルダル君の言うことは「誠意を見せろ」の一点張り。
ツレ夫はツレ夫で
「あんまりこいつを怒らせるなよ?」
「こいつを怒らせると危険だよ?」
「早く払うもん払ったらどうだ?」
と、スカし続ける。
誠意をもって謝っても許してくれない。
要するに金を出せということなのだが、それは言わない。
こっちも「金を払います」なんて、口が裂けても言わない。言うわけない。
水掛け論の押し問答。
ダルダル君の吐く息は酒臭く、だるだるの体は怒鳴るたびに脂肪がゆれる。
もう相手しているだけで気持ち悪い。
普通ならさっさと逃げ出しているところなのだが、あいにくこちらは張り込み中。
ここからいなくなるわけにはいかない。
仕方がないので張り込みしながら、延々とインネンをいなし続ける。
いい加減いやになってきた頃、
ようやく、遠くからパトカーの音が聞こえてきた。
(やれやれ・・・これでどうにかおさまるか・・・)
しかし、それが虚しい期待であることを、その時の私はまだ知らなかった。
続く
豊田の探偵
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