まさかあの主婦が犯人だなんて

探偵とはあらゆる事件に遭遇する職業である。
これは数年前出会ったごく普通の御夫婦におこった事件である。
おびえる奥様を支える様に相談にみえた御夫婦。
警察にも何度も足を運んだが証拠不十分でとりあってもらえなかったと言う。
相談内容は数年前から始まった嫌がらせ。
嫌がらせの内容は年々エスカレートしてきている。
ここに書き込むのも気が引ける内容。
・ 自宅の郵便受けに生ゴミをぶちまける。
・ 所有する車にスプレーで落書き、傷を付ける。
・ ご近所に怪文をばら撒く。
・ 頼んでもいない通販商品が届く。
・ 剃刀が送りつけられてくる。
・ 脅迫状が届く。
・ 数え切れないほどの無言電話。

などまだまだある。誰がそんなえげつない事をするのか？
よほどの恨みがあるのか？
私はこと細かく相談内容を記入する。どこかに犯人のヒントが隠されているかもしれない。
聞き漏れがないよう細心の注意を払う。
依頼者が発する会話のすべてを聞き、ふと気になる点があった。

もしかして……そこがポイントかもしれない。
女探偵の私には女独特の勘というか、違和感を感じる部分が具わっているのかもしれない。

依頼者の会話より、犯人の可能性のある怪しい人物が浮上。
そのターゲットはごく普通の主婦。
子供にも恵まれ、大きなお屋敷に住み優雅に生活を送る主婦。


もしこの主婦が犯人だとしたら、この家庭は間違いなく崩壊する可能性が高い。
張り込みを開始し尾行調査に入る。
この主婦が犯人と特定するまで、そう時間は掛からなかった。


自宅から出掛ける主婦、駅に向う間に大量の手紙の束をポストに投函。
駅の公衆電話で無言電話を掛けている事を確認。
私たちはその様子をカメラで押さえた。
後日、御依頼者の自宅に伺うと対象者が投函したものと同じものが届いていた。
それはまさしく脅迫状と言ってもよい内容。


駅の公衆電話で無言電話をしていた時間と同じ時間に御依頼者様の自宅に無言電話が掛かって来ていた。
これで脅迫状と無言電話の犯人は確定した。


御依頼者様の要望は犯人を見つける事と犯人を刑事事件で告訴する事であった。
これだけの証拠では間違いなく刑事事件として警察がとりあってくれるか微妙である。
すべての嫌がらせを立証するものではないからだ。


数年間生活を脅かされてきた御依頼者様の胸中を考えるとなんとしてでも解決のお手伝いがしたい。
ここから、私たちの本当の戦いが始まった。



次回、私が取った調査手法にあなたは耐えることが出来ますか？



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