●更新日 03/07●


怪人・ロクロウが来る


証言者 SELさん 30代 女性 静岡県

SELさんは現在和歌山県に住む女流妖怪絵師である。
私(山口敏太郎)の怪談本、妖怪図鑑にも、何度も作画で参加頂いている新進気鋭の若手アーティストである。彼女は沢山の不思議な体験をしている。
このロクロウの話もそのひとつである。


彼女が小学生の頃、学校に「ロクロウ」という怪人が来ると噂が立った。
この謎の怪人「ロクロウ」は、パンタロンにチューリップ帽といういかにも当時の70年代ファッションに身を包み現れるという。
つまり、「ロクロウ」は、TV番組の「できるかな」で人気のあったノッポさんを若くしたような風貌で、かなりの二枚目らしい。
なかなかファッショナブルな「ロクロウ」だが、彼は夕方ふらりと、無断で校内に入ってくるのだ。

当時の小学校は今のように人の出入りに厳しくなく、近所の子供やおばさんが勝手に校庭や運動場に出入りできたのだが、「ロクロウ」も子供を待つため、校内に無断で入り込むのだ。そして、タイヤを半分土中に埋めて作った馬飛びの遊具の上に腰を降ろし、手には古くて大きなラジオを片手に、学校帰りの子供を待ち続けるのだ。

そして、「ロクロウ」は子供を捕まえると、無理矢理手に持ったラジオの音を聴かせるのだ。他にこれといった悪さはしないだが、どんなにいやがる子供にも、とにかくラジオを強制的に聴かせてしまう。



その為、当時SELさんたちは夕方になると


「ロクロウが出るから帰ろう!!」


と言って逃げるように帰宅したものだという。


さてさて、「ロクロウ」はラジオの化身なのだろうか。
学生運動が終わり、フォークと深夜ラジオが流行った時代の怪人伝説である。

ロクロウ



山口敏太郎



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