●更新日 10/20●


連続するトラブル、自動改札機に致命的欠陥?


2007年10月18日、東京メトロ等の65駅で精算処理機のトラブルが発生し、ICカード乗車券の精算ができないという事態に陥った。この処理機は、10月12日の朝に起きた、首都圏での自動改札機トラブルと同じく、「日本信号」という企業が製造したものだという。これらの件について探偵ファイルで調査を進めたところ、現状のシステムには根本的な問題があることが発覚した。

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12日の件では、改札機に使用されているプログラムがJRと私鉄で共通のものだったため、被害はより大規模なものとなった。この件はマスコミでも大々的に報道され、日本信号のHPにはアクセスが集中した模様。当時、同社HPには、「お詫び:弊社製自動改札機の不具合について」と題した謝罪文が掲載された。

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注目は、謝罪文の末尾だ。「なお、弊社Webサイトへのアクセス集中の為、つながり難い状態が続いておりました。アクセスして頂いた方々にはご迷惑をお掛けし、申し訳ありませんでした。現在は、トップページのみを掲載し、他のページにつきましてはアクセス出来ないようにしてあります。」とある。ところが、実際には単にトップページから各コンテンツへのリンクをはずしただけだった。あまりにお粗末な対応に、自動改札機等の管理体制への疑問も強まる。

日本信号の西村和義社長は2007年4月5日、下野新聞社の「しもつけ21フォーラム」という企画で講演した。この講演については、「信頼獲得への熱意語る フェイルセーフ思想披露」として、新聞社HPにも掲載されている。

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西村氏は、自社を「人の動くところ、車が動くところには必ず何らかの形で関与している会社。社会のインフラを担うことに社員は使命感と誇りを持っている」と説明し、「フェイルセーフ思想に基づき、どんなことが起きても事故を起こさないよう設計されている」と述べている。「フェイルセーフ」とは、システムが誤作動した場合や、誤って操作してしまった場合にも、安全が確保されるような仕組みを整えることである。

では、この度の自動改札機トラブルで、フェイルセーフは実現していたのか。今回発生した問題の一つは、ICカード乗車券の利用者関連のものである。この点について、JR東日本の職員に実態を聞いてみた。

「改札機が故障ということで、改札口を開放して、お客様にはそのまま通過して頂きました。その後、システムが復旧したということで、自動改札を通常の状態に戻したのですが、結果としてそれが更なるトラブルにつながってしまいました。ご存知と思いますが、Suicaは改札へ入る時と出る時にカードをパネルにタッチすることで、その記録がなされます。そのため、入場記録がない状態のお客様が、窓口で処理をしなければ出られなくなってしまいました。これは大変だということで、再び自動改札を止めて、そのまま通過できるようにしました。」

この対応を、専門家はどのように評価するのだろうか。以下は、リスクマネージメントの研究者に電話取材して得られた回答である。

「JRの対応だけでなく、自動改札機のシステム自体にも問題があったために、ICカード利用者のトラブルが発生したと考えるべきだと思います。フェイルセーフという観点から見ると、現状のシステムは欠陥品です。今回に限らず、一旦停止させたシステムの復旧時に、入場記録のない利用客の問題が発生することは、事前に予測できていたはずです。それならば、ICカードの料金管理機能が失われた状態でも、入退場の記録管理機能は維持されるように設計しなければならないのです。もしそうしていたら、トラブルを最小限に防げたはずです。」

多くの利用客に関わる問題だけに、ぜひとも早急にシステムの改善を検討してほしいと願う。「フェイルセーフ思想」の徹底には賛成だが、実践の伴わない「思想」だけのフェイルセーフでは困る。



高橋



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