●更新日 11/13●
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『酒や麻薬だけではない身近に潜む依存症』精神科医ヤブ





62歳の吉本信二さん(仮名)はうつ病であると同時に、『風邪薬依存症』である。

もう二十年以上も前から、毎食後に欠かすことなく風邪薬を飲んでいる。どういう理由でそうなったのかは分からないが、1日3回の風邪薬を欠かすことができなくなってしまったのだ。ここ数年はパブロンゴールド、それも粉薬がお気に入り。

風邪薬の成分も、過剰に飲み続ければ体に悪さをするかもしれないが、今のところそういう徴候はない。吉本さんは不眠で精神科にかかっているが、私は外来で時々、

「今も風邪薬、飲み続けているんですか」

と尋ねる。すると吉本さんは、

「自分でもやめなきゃいけないとは思っているんですが……」

そう言って恥ずかしそうに笑う。タバコに近い感覚なのだろうか。


人間は、酒やタバコや覚せい剤に限らず、あらゆるものに関して依存症になる可能性がある。最近はギャンブル依存やセックス依存も話題にあがっているが、繰り返されるリストカットや過量服薬、過食嘔吐、DVなども一種の依存症と言えるだろう。そして中には、吉本さんのように一風変わったケースもあるということだ。


ちなみに、パブロンゴールドの成分にはコデインが含まれていて、これは麻薬として有名なモルヒネをメチル化合物にしたものである。もちろんモルヒネと比べるとかなり軽く、鎮痛作用は6分の1、鎮静作用や催眠作用は4分の1だが、咳を止める作用に関してはモルヒネと同等の強さがあるため、咳止め薬として使われている。また、ASKAが話題になった時に記事にした「カフェイン」も少量含まれている。どちらも依存形成するような量ではないのだが、知識として持っておいても良いかもしれない。


さて、今年の正月が明けて、吉本さんの新年最初の外来の時のことである。


ヤブ「年末年始はどうやって過ごしましたか?」


吉本「風邪をひいて寝込んでいました」


ヤブ「それなら、正々堂々と胸を張ってパブロンが飲めたんじゃないですか?」


吉本「いやぁ、きつくって、それどころじゃなくて」


ヤブ「……。」


いや、そこ飲むとこでしょ!!




風邪から回復した吉本さんは、どうにか風邪薬が飲めるくらい元気になり、そして現在もパブロンゴールドを愛用している。



ヤブ ヤブ


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