●更新日 09/21●
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『デング狂想曲』 精神科医ヤブ





いまだにデング熱がマスコミで取り上げられていることに失笑を禁じえない。デング熱は、発熱、痛み(関節痛、筋肉痛)、発疹といったものが主で、全体の雰囲気としてはインフルエンザと似ている。インフルエンザとの大きな違いは、デングウイルスが蚊媒介で、インフルエンザウイルスが飛沫感染ということである。


医学的にみてデング熱はそう怖い病気ではない、と書くと批判を受けそうだが、

「インフルエンザと同じくらいに怖い病気である」

と言えば、デング熱の怖さがどれくらいか分かるだろう。

「でも、テレビでは、デング出血熱というのがあって、とても危険な病気だと紹介されていましたよ」

そう患者に言われたこともある。そこでデング出血熱についても説明しておこう。


デングウイルスには4つの型がある。これらのうち一つに感染して回復すると、体内には何種類かのデングウイルスに対する防御機構が生まれる。この免疫は数週間でなくなり、再びデングウイルスに感染するようになる。この時点で、前回と異なる型のデングウイルスに感染すると、デング出血熱を引き起こす「可能性がある」。この「可能性」がどれくらいかというと、ある統計によれば全世界で年間1億人がデング熱を発症し、そのうち約25万人がデング出血熱を発症する(0.25%)。この重症化の理由として、免疫機構が関わっているという説が有力だ。デング出血熱に至る可能性の高い因子のうち分かりやすいものを挙げておく。


1.12歳以下が多い。

2.女性のほうが多い。

3.栄養状態が良いほうが多い。



この中で面白いのは3番で、栄養状態が悪いほうがデング出血熱になりにくいのだ。シンプルに考えれば、栄養不良だと免疫機構が強く働かないということだろう。運悪くデング出血熱になってしまった場合の死亡率はどうなのだろうか。『ハリソン内科学』という権威ある内科学の教科書にはこう記載してある。


「全体的な死亡率は、支持療法(ヤブ注:特別な治療ではなく点滴や輸血など)を行なうと1%未満、おそらくせいぜい1%程度だろう」


ここで、デング熱からデング出血熱になって死亡するまでの道筋をまとめる。

まずデング熱に感染し、そこから回復して数週間以上が経過して、さらに別のタイプのデングウイルスに感染した人が4万人いるとして、その中の100人がデング出血熱にまで至り、そのうち1人が死亡するということだ。


これでも皆さん、マスコミが垂れ流す『デング狂想曲』にのって踊り続けますか?


※ただし、蚊に刺されないようにする感染予防、蚊の発生を防ぐ防疫などが重要なことは言うまでもない。

※ちなみに、アフリカで問題になっているエボラウイルスによるエボラ出血熱は、同じ「出血熱」でも圧倒的に感染力が強い上に、死亡率は50−90%である。



ヤブ ヤブ


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