●更新日 10/06●


ミステリーショッパーの事件簿(3)


〜前回〜


京子が高価なリングをなくしたレストランに来た僕たち。軽い気持ちで持っていた盗聴器を手帳に仕掛け、わざとテーブルの上に置いてきた。すると受信機から異変が・・・


誰かが手帳を持ち出したようだ。
僕と京子は息をのんで受信機から発する音を聞き取る。
次第にクラシックの音楽が遠ざかっていく。それと同時に女性の声がはっきりと聞こえてきた。

「これエルメスじゃーん!なになに?忘れ物?」
「いいなー!あたしコレ欲しいんだけどぉー」
「大丈夫!バレないバレない!あたしも昨日カルティエゲットしちゃったしねー♪」


写真

僕は一瞬息ができなかった。
きっと京子も同じだったであろう。

彼女のカルティエリングはレストランの従業員が持ち去ったのだ。
そして今、僕の手帳も従業員の手に渡っている。
僕たちは急いでレストランへ戻った。そして息を弾ませクロークの男性従業員に言った。

「さっきこちらにエルメスの手帳を置き忘れていったんですが!」

男性は「お調べいたします」と言い残し奥へと入って行った。
しばらくすると先ほどの男性が戻ってきた。

「申し訳ありません。手帳のお忘れ物はただいま預かっておりませんが・・・」
「いえ、必ずこの店内にあるはずです!」

強い口調で言うと男性は困った顔をして再度店内を探すと店の奥へと入った。
10分ほど経ち、申し訳なさそうに男性が戻ってきた。
その表情からやはり手帳の落し物はないのだな、と察した。

写真

僕は店長を呼んでもらい事情を説明したあとに、盗聴器から聞こえた音声をそのまま聞いてもらった。
完全なる証拠である。
店長は青ざめた顔をして僕たちに頭を下げた。
その後、僕の手帳とカルティエリングは戻ってきた。
どうやら新人バイトがこっそりと隠していたようだった。
通報はしなかったが、探偵という仕事が私生活で役に立ったなと思った出来事だった。



探偵チャッキー



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