●更新日 08/22●


韓国人スン・ジョンヨクの策略(後編)


〜前回〜

ガセネタをLAベイルボンズにわざわざ流した人物は獲物本人だ。
もしもそうならば獲物ジョンヨクは実家の近辺にいる。

すぐに近辺で聞き込みをおこなってみたところ、やはり獲物の坊やは居た。
いかがわしい外人娼婦が出入りするバーに頻繁に顔を出していたのである。
張り込みをしてみると案の定だが獲物は現れた。
悟られないように慎重に近寄ってはみたものの、殺気を感じたのか獲物は慌ててその場から逃げ出した。

写真
「Shit! 逃がすわけにはいかない」

追いかけようとしたそのとき、四人の若者の客に邪魔をされて足止めを食らってしまった。
そのせいで獲物には逃げられてしまったのである。

状況からして獲物の友人に間違いないと悟ったので、ひとりを尾行した。
そして路地裏へとその友人ス・チョルソンを引きずり込んだ。
暴れるチョルソンを抑え込んだところで、ネゴシエーションに取り掛かった。

写真
「アメリカの犯罪者の逃亡を手助けするとどういう罪に問われるか知っているか?重罪で3年はブチ込まれるぞ」
その気はないが吐かせるためにハッタリで脅してやった。
口を割る際には相手によって様々なやり方で挑むようにしているのだ。
ビビったチョルソンは泣きっツラで知っていることを正直に喋ってくれた。
獲物ジョンヨクはチェジュ島の祖父の元へと潜伏場所を移動するということを話していたのを知った。
チョルソンに追手の私のことを堅く口止めして、翌朝にチェジュ島へと飛んだ。
昔にチェジュ島は観光で一週間ほど滞在したことがあったのでおおまかな地理は記憶していたので楽だった。
だが獲物の引き戻し期日が迫っているので焦っていた。
ここで必ず逮捕しなければ任務遂行は困難になる可能性を予感した。

写真
ジョンヨクの祖父の家は海岸そばの丘の上にあった。
離れから高性能マイクロスコープで家の様子を窺ってみると、獲物のジョンヨクの姿をハッキリと捕捉した。
再び獲物捕獲のチャンス到来である。
間髪入れずにジョンヨクの祖父宅へと乗り込むことにした。
韓国は日本と同じく拳銃の所持は厳しいので、いくら逃亡犯といえども武装している可能性は薄いと判断した。
また私も同様でアメリカとは異なり、まるごしなのでそれを願った。
幸いドアは開いていたのでブチ破る手間は省けたのでそのまま静かに侵入。
我々ハンターはそこに逃亡犯がいると分かっていればどの家へでも入り込むことが許されている。
ジョンヨクの祖父は寝室で休んでいた。
室内を進むと獲物はリビングのソファでテレビをみながらくつろいでいた。
背後からにじり寄るとジョンヨクの首筋に手刀を降り下した。
眠っている祖父に気がつかれないように、その場で気絶した獲物を外へと引きずり出して数回ビンタを食らわせて意識を戻した。
朦朧としているジョンヨクを車へと押し込んでそのまま空港へと向かう。
チェジュ島からは飛行機でソウルを経由してアメリカへと戻った。
機中で獲物は無駄な抵抗をすることもなく、おとなしくお縄になっていたのでホッとした。
写真

LAベイルボンズに顔を出すと、逮捕期日以内に遂行できたことを喜んでくれた。
だがガセネタを掴まされて動いたことに私がアタマにきていたのは当然だ。
あえてその件については黙して語らなかった。
それが日本流の武士道である。


写真
それを知ってか勘が鋭い親友でありボスのトニーはその夜、普段は飲まないくせに場末のバーへと私を誘った。
そして夜明けまでふたりで飲み明かしたのである。



バウンティハンター



◇上記のタグを自分のサイトに張ってリンクしよう!


探偵ファイルのトップへ戻る

前の記事
今月のインデックス
次の記事