●更新日 07/09●


ロシアへの逃亡者(前編)


荒木です。


アメリカは国土も広く海外に対しての影響力は良きも悪きも多大である。
それを念頭において捜査官たちは国外で活動しなければならない。
逃亡犯人が高飛びすれば地の果てまでも追跡する我々バウンティハンターも例外ではない。
ベイルジャンパー(保釈金踏み倒し逃亡犯)ばかりか、FBIやUSマーシャルが国際指名手配している連邦犯罪者をも着手する。
だから本土でのチェイスでも当然だが更に気持ちを緩めずに挑むことにしている。



私はLAX国際空港からロシアへ向けて機上の人となっていた。
ロシアへと逃亡を図った獲物はアナトーリ・ボドロフ(35歳)、不法滞在で指名手配になって逮捕されたがベイルボンズが保釈保証をしてシャバに出られた。
だがボドロフは保釈中に再犯を繰り返したのだ。
現金欲しさに酒屋を強盗未遂して再逮捕。そしてまたボンズに泣きついて保釈された。
無論、公判には姿を見せずに逃亡。
懲りないボドロフを獲物に決めた私は捜査を開始していた。
賞金はUS8000ドルなので悪くない。

初動捜査のプロファイリングの時点でロスには親しい身内がないことから高飛びを推測した。
そこでボドロフの知人にチップを弾んで聞き込みをしたところ、偽造パスポートを入手して帰国した有力情報を得られることができた。
現金をチラつかされると簡単に友人を売る情けないヤツであったが、私にとっては仕事に有意な有難い手助けである。
アメリカではたいがい現金を見せると情報を入手できる。
だが相手によっては武力行使もときにはおこなう事もある。
それは明らかに犯罪に手を染めている輩だけだが。



獲物の故郷はロシアのウラジオストクだ。
情報提供者の話しではボドロフは故郷に戻ると言ってたそうだ。
アメリカと同様に広大な国土のロシアだが、以前に他の逃亡者を追いつめに渡航した経験があるので不安は皆無であった。
とは言っても英語圏ではないのですべての人とコミュニケーションがとれないのはツライ思いがある。
そのために少しずつではあるが様々な外国語を身につけるように努力している。
極力はすべてにおいて不自由は避けたいのは人の常である。
無論だが観光ではないので楽しめるものではないが、いつもながら海外への移動は胸が躍る。



ウラジオストク国際空港に到着した私はタクシーにて市街地へと入った。
宿は私が好きなオーシャンビューに位置するマルスカヤ通り近くのアムールスキー・ザリーフにした。
立地条件の良さを考えると宿泊費もUS25ドルとリーズナブルで安い。
経費を念頭において行動しなければならない捜査官の私にとって有難い。
フライトの疲労が多少でてはいたが休むことなく捜査に着手。
実行は早いほうが気持ちがいい。
まずは情報提供者から得たボドロフが潜伏のために身を寄せている友人宅の確認をすることであった。
街でレンタカーを借りて現地へと向かった。



ロシアの街並みはアメリカとは違う風情があり美しい。
だがこの町は危険地帯が多い場所で有名だ。
犯罪トラブルは日常茶飯事である。
その点はどこの国もご同様なのは物悲しい。
ボドロフの友人であるカプスタの家は郊外の山中にあった。
距離をおいて停車させた私は山林の茂みから高性能マイクロスコープで家の様子を窺った。
すると獲物のボドロフと数人の動きが確認できた。
それも風体からして非凡ではない。直感では地元マフィアの可能性大であった。
それと同時に一筋縄ではいかない捕物になる予感を感じとった。
アメリカならばいかなる装備も許される我々の稼業だが、法が違う海外のロシアでは勝手が違う。
そこで私は捕獲作戦を練るためにいったん市街地へと戻ることにした。
友人たちが獲物をガードしているいじょうは容易には近寄れない。
獲物以外を傷つけずに任務完了させる手段を思いついた。



街のスポーツショップでブローガン(吹き矢)を入手。
これで友人たちを眠らせておいて獲物を静かにハンティングしようという算段である。



バウンティハンター



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