●更新日 04/18●


海外への逃亡(後編)


ターゲットが向かった先はシンガポール航空のカウンターだった。
直近の出発便を見る。
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出発の時間までは多少の余裕があった。
手続きを済ませたターゲットはゆっくりとした足取りで展望ホールへ移動した。
真っ青な空が広がる下でターゲットはベンチに腰掛ける。
そして目をつぶり空を仰いだ。
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「上手く逃げられる」
安堵する表情から、そんなことを思っていたのではないだろうか。

そのとき依頼者から連絡が入った。

「到着しました」
私はフーっと息を吐き、ターゲットが展望スペースにいることを告げた

・・・それから5分後。

依頼者とターゲットは対峙していた。
2人の間でどのような会話が交わされたのかは分からない。
ただ興奮する依頼者をあざけるように、終始笑みを浮かべていたターゲットの表情が印象的だった。
シンガポールに行くことなく神奈川に戻ったターゲットの調査は尚も続けられた。
そして空港の一件から3日後
ターゲットが喫茶店で接触した男性との会話を今でも鮮明に覚えている。
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「この前、関空(関西国際空港)に行ったら、○○(依頼者の名前)と会ってさ。
尾行されてるかと思ったよ」


そう言った後、ターゲットは甲高い声で大笑いした。
返済日が明日に迫っている時だった。
大声で笑うターゲットを横目に見ながら「こいつは一生尾行し続けても気付かないだろう」そして「これからも依頼者を悩ませ続ける人物だろう」と感じずにはいられなかった 。

それからことある毎に、その人物の素行調査の依頼があったことは言うまでもない。

そして、もしもあの時、依頼者の到着がターゲットの出発に間に合わなかったらどうしていたか。
それは・・・

シンガポール行きの便に同乗する。

意外と知られていないが、探偵は常にパスポートを携帯している。
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ターゲットがどこへ向かおうとも尾行を続けることが、探偵の醍醐味なのだから。



探偵エス



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