●更新日 04/09●


ストーカー対策(後編)


犯人は郵便物を不正入手している。



手がかりは未だにない。しかし、突破口は見つかったようだ。
情報の漏洩ルートがわかったなら対策はある。

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ある夜。深夜1時

依頼者のマンションに不審な男が現れる。
男は依頼者の部屋の前まで行くと、電気メーターをじっと見つめはじめた。


メーターの回転速度で、彼女の就寝を確認するつもりなのだ。

回転速度は遅い。彼女は眠っている。
それを見届け、満足そうに頷いた男は、


そのままドアポストに手を差し込んだ。

郵便物を抜き取った男は、それを持ってマンションを出て行く。
そして、とあるアパートの一室へ帰っていった。

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一部始終はビデオカメラに収められた。
依頼者に電話番号を変更してもらった私たちは、電話料金の明細書が郵送される日を前もって調べ、依頼者のマンションに張り込んでいたのだ。
案の定、郵便物を狙ってやってきた犯人を尾行し、その住所を突き止めたのだった。


「その人なら覚えがあります。」
住所から調べた男の名前を告げると、依頼者は驚きを隠せない様子だった。
「その人は、一度だけ私の友人と3人で食事をした人です。その後『2人だけで食事をしよう』と誘われましたが、当時、私には彼氏がいたので断ったんです。それっきり、会うことも連絡することもなかったのですが……。」

彼女は警察沙汰を望まなかった。
私は証拠のビデオと、無言電話の記録を持って男のアパートへと向った。


「○○さんですね?」
男を訪問しストーカー行為を問い詰めた。
最初はとぼける振りをした男だったが、証拠を突きつけるとあっさりと罪を認め、無言電話の理由を話しはじめた。

男は、依頼者に対して恋愛感情があったのだが、交際を断られた。
そのため、いつの間にか恋情が憎しみに変わってしまったのだという。


いかにもストーカーらしい手前勝手な理由だ。

彼女がどれほど苦しんできたかを延々と話して聞かせると、男は自分がしてきたことの愚かさを痛感していたようで、目に涙を浮かべはじめた。
私は男に今後は彼女のマンションには近づかないことを約束させ、それを念書に書かせた。



報告を聞いた依頼者は、安堵のあまり涙ぐんだ。
彼女のお礼を聞きながら、しかし、私はまだ安心できずにいた。

約束したから、念書を書かせたからといって、保証ができたわけではない。
ストーカーの感情は根深いのだ。いつまた再発するかわからない。
安心するには、もう少し様子を見る必要があった。

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数ヶ月後。依頼者に連絡をとり、近況を聞いてみた。
その後ストーカー行為はなくなり、仕事にも復帰し、普段の生活を完全に取り戻せたとのことだった。


久しぶりの彼女の声は明るく、以前の暗いイメージはもうどこにもなかった。

どうやら、私たちは無事役目を終えたようだ。
私はやっと安心し、この調査を終了とすることにしたのだった。



チープ彦坂



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