●更新日 02/23●


ある不運な男の話


今回の調査は結婚調査。愛知県在住の男性からの依頼。

花嫁予定の女性は北海道在住の30歳。
バツ1で、前の夫との間に子供が一人。
今はその子供と、母親との3人で暮らしている。

依頼者男性は愛知県。一方、彼女は北海道。
そんな二人が出会ったのはインターネットの「出会い系サイト」。
遠距離恋愛、相思相愛の果て、このほどめでたく結婚とあいなった次第。

しかし、依頼者の胸に一抹の不安。

「彼女、前の夫とは、どんな理由で別れたんだろう?」

探偵としては二人の恋路も結婚も、邪魔するつもりは毛頭ない。
しかし、彼女はバツ1・子持ち。放っておくのも考えもの。
もし離婚の理由が彼女にあるのだとしたら、今回の結婚だってうまくいくとは限らない。

彼女本人に言わせると、離婚の理由は「元夫の借金」だったとのこと。
嘘か、本当かはわからない。

そんなわけでの結婚調査。探偵は一路北海道へ。
写真

まずは、彼女の住所の下見。
しかし、いきなりつまづいた。
今の住まいはあるけれど、前の住まいの家が無い。

彼女が前の夫と暮していた家が見当たらない。
「ここかなあ?」と思う場所を見回してみても、辺りには寂れた廃屋があるばかり。
写真

あちらこちらと調べてまわり、ようやく見つけた住所へ行くと、
写真 まっ平ら。
駐車場になっていた。

どうやら家は既に取壊されている様子。
それでも、とにかく前の住所は見つかった。周辺での聞き込み調査を開始する。

まずは「彼女の性格」について。
これは『たいへん良い』とのこと。
気立てがよく、子供をとても可愛がっていたらしい。悪い噂は全然ない。

次に「離婚の理由」について。
これは知っている人がいなかった。
そりゃそうだ。離婚のことなど、彼女にしてみれば隠したい事。近所の人がそうそう知っているはずもない。

探偵「ところで家が無いけど、何年前に引っ越されたんですか?」
住民「3年程前だよ。家が無くなったから引っ越していったね。」
探偵「家が無くなったから?」
住民「あの家は古かったからね。台風で家の屋根が飛んじゃったんだ。」
写真
近くに在る廃屋をみて思わず納得。おそらく築数十年の住宅だったんだろう。
住むところを無くした一家は、某アパートへ引っ越していったという。

(なんと不幸な・・・)

更に聞き込みを続けると、元夫について重要な証言。

住民「ご主人の勤務先は○○という会社だったよ。」

早速行ってみたのだが、教えられた住所に会社はなく、ただの倉庫になっている。
また、つまづいた。
近所にある別の会社へ聞き込みをしてみると。

別会社「○○と言う会社は無くなったよ。」
探 偵「えっ!」
別会社「数年前に倒産したんだ。社員は全員クビ(リストラ)になったよ 。」
探 偵「えええっ!?」
写真
(なんとまあ不幸な・・・)

台風で家をフッ飛ばされた直後、自分のクビもフッ飛ばされたのだ。
結婚したばかり。子供もいる。子供は生まれたばかりで妻は働きに出られない。
そのまま収入がなく、貯金が少なくなったら・・・
「離婚理由は元夫の借金」との本人談。どうやら現実味を帯びてきた。

続いて、家を吹き飛ばされた元夫たちが移り住んだというアパートの周辺を聞き込んでみる。
小さな山の中腹に在るアパート。道路の横は崖である。
写真 こんな感じ。

ここで聞かれた元夫に関する証言。

住民「あの人、車ごと崖に落ちていったな〜」
探偵「うそぉっ!?」
住民「車の運転を誤ったのかね〜? 大きな音をたてて落ちていったね〜。
   崖の途中の木に引っ掛かって、どうにか命は助かったみたいだよ〜」


(が、崖に落ちたって・・・どこまで不幸な・・・)

家をフッ飛ばされて、クビをフッ飛ばされて、あげくに自らフッ飛んでしまったらしい。
車の修理費・治療費・レッカー代・・・随分な出費があったに違いない。
元夫が多額の借金を抱え込んでしまったことは、ほぼ間違いない。

結局、彼女に関しては悪い噂は無かった。
離婚理由も本人が言っているとおり「元夫の借金」と見ていいだろう。
彼女は嘘をついてはいない。

北海道から戻り、ありのままを報告する。
依頼者も喜んでくれた。良かった。
二人には無事、結婚に向けて歩んでいってもらえる。
我々は“影の仲人”を務めることができたというわけだ。
写真

しかし、元夫の借金の理由が「天災」「倒産」「事故」とは・・・なんとも言えない後味が残る。
結婚と、新しい生活に向けて歩き出した依頼者と対象者。それから、世にも不運な元夫。
3人の未来に幸多からんことを祈りたい。



ガルエージェンシー愛知東三河



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