●更新日 02/06●


マッチョな同棲相手の謎の行動(前編)


依頼者は50代の女性、ターゲットは40代の彼氏


毎年冬になると、ある調査のことを思い出す。

当時、彼は数年前に知人の連帯保証人になり、それが元で多額の借金を背負う事になってしまった。アメフトをしていた学生時代からの先輩からだったので断れなかったという。

依頼者は10歳上の独身。ターゲットとは昔からの知人で良き相談相手という間柄である。依頼者は彼が借金を背負ってしまった経緯を知り、ターゲットに非が無い事などから同情心が芽生え、自身が所有しているアパートの一室を無料で提供し、時には食事の面倒を見る事もあった。やがて同情は愛情へと発展し、2人は自然な流れでマッチョな彼と同棲を始める事になった。





同棲当初は真面目に働いていたマッチョだが、2年を過ぎる頃には彼の行動に不審な動きが目に付くようになったという。そう、女の影である。

依頼者が聞いても「そんなわけない。」の一点張り。我慢の限界に達した依頼者は「浮気の証拠を掴み、彼に見切りを付けたい。」と依頼して来た。

苦労した時期を支えてきた依頼者にしたら計り知れない裏切り行為だと同情せずにはいられない。


調査は計4日間。勤務終了後に退社するターゲットの行動を監視し、浮気の証拠を撮影する段取りになった。対象者は川崎市にある大手企業の工場に勤務するサラリーマンで、定時は18:00だが残業もあるという。こういう案件は、実は非常に厄介なのだ。

寒ーイ。

大手工場は広く、広いという事は出入口も複数ある。出入口が複数あるという事は、複数の箇所を監視しなければいけない。1人ずつ1つの出入口近くに立って、真冬の2月にいつ出るかわからない対象者を待ち続けなければならないのだ。

調査前から想像するだけで大変そうな案件だが、依頼者の明るい未来の為にはやるしかない。



1日目、定時をとうに過ぎた3時間後の21:00、正門を通過する送迎バスの車内にターゲットであるマッチョの姿を確認する。調査員は寒さで足先の感覚がなくなり、凍えた身体に鞭を打ってバイクで追尾を開始。



バスが川崎駅に到着すると同時に相談員から連絡が入り、依頼者からの連絡で対象者が「仕事が終わったから今から帰る。」とメールして来たとのこと。実際にその日は川崎駅から電車に乗り、真っ直ぐ帰宅した。つまり、この日は空振りに終わった。

2日目・3日目共に、定時を過ぎた2〜3時間後に退社してまっすぐ帰宅する日が続いた。ここまで来ると対象者は浮気をしていないのではないか、依頼者の勘違いなのか、とも思えてくる。あまりに寒いとついそんなことを考えてしまうものだ。

いよいよ調査最終日。対象者は休日出勤しているという。調査員は閑散とした工場地帯でぽつんと通用口の監視に入る。今日も送迎バスで川崎駅に行き、真っ直ぐ帰宅するだろうな、と思っていた調査員の前を、まだ定時を過ぎて10分も経たないうちに対象者が徒歩で横切った。慌てて追尾を開始すると、ターゲットのマッチョはまっすぐ最寄り駅へと向かった。いつもとは明らかに行動が違う。



この後とんでもないものを目にすることになるとは、調査員はこの時点では知る由もなかった。



つづく



金の卵



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