●更新日 08/26●


説明のつかないリアルな怪談


ホラー作家、オカルト研究家という仕事に従事して想うのは、関係者に心霊現象を信じてない人が多いことである。ホラー関連のライターや作家さんでも、仕事として割り切ってやっている人が多い。



「仕事でやっているだけで霊の存在は信じていません」
「僕はオカルトや霊なんか大嫌いなんですよ。僕が書いている実話怪談は全部創作ですよ」

と明言する人さえいる。
実話という看板をあげながらも、創作をやっている人物もいる。

時には哀れんだ目で「山口さんは、よく信じてて、この仕事やってられるね」と言われることさえある。
元々、オカルト好きからオカルト業界に入った筆者としては仰天である。昭和のうぶなプロレスファンがプロレス業界に入り、全部フェイクだった事に気がつき唖然とするのと同じである。
なんなら、オカルト作家、怪談作家の同級生に確かめてみるがいい。半数ぐらいの作家がまったく、学生時代に怪談なんぞ見抜きもしてないのだ。つまり、みんな仕事として、プロとしてやっているのだ。



だが、どう考えても不可解な出来事はありうるし、創作や勘違いではないリアルな怪談はある。
筆者は東京都青梅の町おこしを10年近く手伝っているのだが、ある時、責任者である昭和レトロ商品博物館の横川館長とこんな話をしていた。

「町おこしに景気のよい妖怪はないかね?」
「そうですね、かねだまなんかどうでしょう」
「それ、いいねえ」
「でも、妖怪・かねだまの伝承は町田にはありますが、青梅にはありませんよ」

こんな会話をした後、会議を行った。
すると、出席していた地元の童話作家の小川秋子女史がこんな事を言い出した。

「今日ね、新しい妖怪伝承を聞いたのよ」
「どんな妖怪ですか」

横川館長の質問に小川女史はさらりと言ってのけた。
「かねだまよ」

この回答に横川館長と筆者は顔を見合わせた。かねだまの話はこの二人しかしらないはずである。
少々気味悪く想いながらも会議は続き、かねだまの敵役の妖怪を設定することになった。

「なにかよい敵役の妖怪はないかね」

という横川館長の問いに、筆者はこう答えた。
「そうですね、貧乏神がいいですが、青梅にはいないですよね」

すると、会議に同席していた0さんが手をあげてこんな事を言い出したのだ。
「うちの向かいの床屋さんは、先代からずっと貧乏神を奉ってるよ」

意外な事に、青梅商店街の中に、貧乏神を奉っている店があったのだ。貧乏神を奉る事で、これ以上貧乏にならないというご利益があるのだそうだ。この偶然の連続には横川館長も、私も妖怪たちの導きというものを感じた。



山口敏太郎



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