●更新日 06/01●


江東区 OL 失踪事件で再注目のエロゲー規制案に反論


江東区OL失踪事件に関する報道で、先日の記事でお伝えした「美少女アダルトアニメ雑誌とゲームの製造・販売の規制法制定に関する請願」が再び注目を集めている。

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5月31日の日刊ゲンダイによると、逮捕された星島貴徳容疑者は、親しい知人に「2次元の女にしか興味が持てない」と漏らしていたという。「上京直後からエロゲームにのめり込み、バーチャルな女性との疑似恋愛しかできない男だった」とのこと。「東城さんは、現実とバーチャルの狭間を見失った“危ないオタク”の犠牲者なのか」との記述もある。

民主党の円より子議員曰く、「街中に氾濫(はんらん)している美少女アダルトアニメ雑誌やゲームは、小学生の少女をイメージしているものが多く、このようなゲームに誘われた青少年の多くは知らず知らずのうちに心を破壊され、人間性を失っており、既に幼い少女が連れ去られ殺害される事件が起きている」とのこと。

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この主張の是非を、都内の大学病院に勤務する精神科医に聞いてみた。同氏曰く、「「ゲーム脳」問題の再来ですね。根拠に乏しい内容であり、賛成できません」とのこと。「心の破壊」、「人間性の喪失」という抽象的表現の指すものが具体的に何であるのか不明なまま法制化を進めることなど、あってはならないという。

また、事件の加害者がこの類のアニメやゲームを愛好している場合でも、事件の原因となったかどうかは自明ではないようだ。たとえ加害者が「ゲームに影響された」と証言したとしても、それをどこまで信用できるかは定かでなく、事件の原因を完全に特定することはほぼ不可能に近いとのこと。「あれだけ騒がれた宮崎勤の精神鑑定でも、担当者が代わるたびに毎回異なった結果が出ていたという現実を直視すべきです」という。

むしろ、「アニメやゲームが性犯罪につながる」という言説が流布した現状では、加害者本人も「原因はゲームやアニメだった」という前提で語ってしまうことが多いそうだ。その結果、精神鑑定は一層困難になっているという。精神科医は言う、「円さんは新聞記者出身ですが、こういう状況を生んだのはマスコミの根拠のない偏った報道です」。

一方で同氏は、「だからといって、「人々がアニメやゲームで性欲を処理することで、性犯罪を抑止できている」という擁護論も、どこまで一般化できるのかは疑問です」という。個々の事例によって状況は異なるので、一律に規制したり全面的に擁護したりしても社会的偏見を助長するだけで、問題の解決にはならないのではないかと述べる。

「ゲームやアニメが原因であるとされやすいのは、それによって複雑な世界を単純化して、「分かったつもり」になれるからでしょう」と同氏は言う。一連の騒動の背景にある思考も、まさにその典型なのかもしれない。



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