●更新日 05/11●


最初で、たぶん、最後の手紙


HN:紫ハンガー  24才  男性

母よ。
数ヶ月前、あなたは私にこう言いましたね。
“あんたはいつか恐ろしいことをしそうだ”と。
”あんたの行動に怯えているのだ”と。
──そうですか。そう思うのですか。
でもね、母よ。
私は、恐ろしいことも、怯えさせるようなことも、致しません。

覚えていますか。あの家で起きていたことを。
あなたの振る舞いが、私にどんな影響を与えていたかを。

「死ね、死ね、死ね、死ね、死ね……」
あなたが発した言葉のうちで、一番回数が多かったのがこの言葉でした。
何千何万、といった回数でしょう。
毎夜のように怯えていた私の気持ちを、想像できますか。
いいえ、きっと出来ないのでしょう。
だから言い続けていたのですね。

死ね、の一言は毎回のように、私のココロの中の大事な何かを蹂躙していきました。
暴力的に粉々にされた破片を、私は必死に集め、泣きながら修復していました。
ただし最初の間だけですけれど。
そのうち、どうでもよくなっていきました。
自分がいくら傷ついても、そのまま。
修復しても、また直ぐに壊されるんなら、無駄ジャン、って。
私は私に対して興味を失っていきました。

そんな私のことを、あなたは、良い子だと思っていたようですね。
親のことを良く聞く、優しい子。
ふふっ、バカみたい。

冒頭でも触れましたが、私は、恐ろしいことなんてしません。
人を脅かせるつもりもありません。
それでも、あなたは怯えているのでしょう、怖いのでしょう。

きっと、還っているのですよ。かつてのあなたの振る舞いが。

……っと、大事なこと書き忘れていました。
”母親業、お疲れさま”
                          息子より


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