●更新日 09/29●


大相撲ビール瓶殴打事件、小錦も被害者だった


稽古後に急死した力士の問題で、兄弟子や親方がビール瓶や金属バットで殴打していたことが発覚し、話題を呼んでいる。だが、このような事件は相撲界では昔から繰り返されてきたようだ。

2007年9月27日のスポーツ報知の記事によると、時津風部屋の序ノ口力士だった時太山に対して、時津風親方(元小結・双津竜)と兄弟子数人が、ビール瓶や金属バットで暴行を加えていたという。死亡が確認されたのは6月26日のことだったが、その二日後に行われた会見で親方は、若い力士を育てるための「かわいがり」であって制裁目的での暴行ではないと述べた。

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一方、同じく9月27日のサンスポでは、ビール瓶での暴行は常軌を逸していると認めつつ、「かわいがり」を肯定的に評価している。「「けいこだけは肉親には見せられない」という大相撲の親方が、昔は多かった。竹刀やホウキの柄で滅茶苦茶にたたかれ、体中ミミズ腫れになったわが子の姿を見せられたら親は取り乱す。しかし、親方や古参の兄弟子が「そこまで」という“愛のムチ”の限界を心得ていて、息絶え絶えだった若い力士もすぐに元気を取り戻した。部屋によってはいまも残るそんな厳しいけいこでファンを喜ばせる強い力士が育ち、悪童が礼儀正しい若者に変身し親が感謝する。それが相撲界の特質でもある。」

ところが、「常軌を逸している」はずのビール瓶での暴行は、初めて発覚したような大事件ではないらしい。大相撲にも詳しいスポーツジャーナリストN氏(仮名)曰く、「スポーツ新聞の記者は相撲部屋に頻繁に取材で出入りしていますから、知っていても書けるはずないですよ」とのこと。

実は、タレントで元大関のKONISHIKI(小錦)が、自身が新弟子だった頃にビール瓶で頭部を殴打されたことを告白している。KONISHIKIは2007年6月まで、東京新聞夕刊で連載企画「この道」を執筆していた。この中で、兄弟子たちからの暴行や、身の回りの物を頻繁に隠されたり、故郷の親から届いた手紙を捨てられたりと、様々な嫌がらせを受けていたことを詳細に記している。

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たとえ嫌がらせを受けても、その場で仕返しすることはしなかったそうだ。稽古で土俵に上がった時に相手を思い切り打ち負かすことで、兄弟子たちへの「復讐」をしていたという。

このことについてN氏に話すと、「ビール瓶の話は、今回の連載が初出ではないはずですよ」と教えてくれた。KONISHIKIは過去に出した著作「はだかの小錦」(読売新聞社、1998年)の中でも、この問題に触れていたようだ。

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N氏曰く、「彼の場合、現役時代には最後まで人間関係でのトラブルが多かったようです。日本人力士なら横綱になれるはずの成績を出しているにもかかわらず、昇進がなかなか認められなかった時期に、「外人だから差別的な扱いを受ける」という発言がマスコミで報道されて話題になったこともありました。あれは彼自身が言ったことではなくて、部屋の力士が小錦の気持ちを代弁するつもりでマスコミに対して言ったことだったのに、本人の発言であるかのように報じられたということです。この点については、著作の中でも触れていました。引退についても、本人の気持ちが尊重されず、親方の意思に従った結果だったようです。彼の身近にいる人から聞いた話では、親方との関係がうまくいかなくて、苦労していたようですね。」


「親方」との関係で悩むのは我々社会人も同じ。とはいえ「悪童が礼儀正しい若者に変身し親が感謝する。それが相撲界の特質でもある。」とまで言い切るのが相撲界。ならば、その礼儀正しい若者がさらに成長した「親方」は素晴らしい人格者であって欲しいものである。
「悪親が礼儀正しい人間に変身し子が感謝する」今後、相撲協会が目指すべきはこれではないだろうか。



高橋



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