おぼっちゃまくんの寝相矯正法
私は昔、親友を葬ったことがある。
あれは高校の修学旅行のときだった。
枕投げで疲れ果てた私は、親友Aと共に布団の上に倒れ込み、眠った。
・・・そして朝起きたら、隣に寝ていた友人が死んでいた。
私の寝相の悪さが原因だった。寝返りを打った私の下敷きになり、彼は死んだのだ。
なんとか自然死に見せかけ事なきを得たが、私の心には深い傷が残った。
それ以来、私の寝相は悪くなる一方だった。
朝起きるとガラスが割れていたり、布団が吹っ飛んだりしていることが多くなった。
このままではダメだ。いつかまた同じ過ちを犯してしまう。
寝相の悪さを治すため、もぐりの医者に見てもらったが、ダメだった。
力が何倍にもなる水を求め、高い高い塔の上にも登ったが、猫が一匹いただけだった。
どうしようもなかった・・・どうしようもなかった。
それから私は、就寝の際、自ら拘束具を付けるようになった。人生終わったと思った。
エヘヘヘ
しかし突然転機が訪れた。
ある書物で「絶対に直る寝相矯正法」の存在を知ったのだ。
その書物とは、そう、おぼっちゃまくん。
おぼっちゃまくんの寝相はとても良い。エジプトの王族のような寝姿で、ピクリとも動かない。
これは彼が行った『自分の周りに刃物を突き立てて、少しでも寝返りを打てば、周りの刃物が体を切り刻む』という寝相矯正法の成果に他ならない。これはすごい。
ということで、自分のベッドを犠牲にしてその装置を作ってみた。
ここに寝る
寝返りは死を意味する
やったぜ。これで寝相の悪さともおさらばだ。起きたときにはもう直ってるはず。
寝ます。おやすみなさい。
・・・
うーん
・・・
眠れない。すごく怖い。眠れない。すごく怖い。
でもがんばって寝る。
・・・
スー、スー
なんとか眠りに付いた私は夢を見た。
それは、ヒジを使って痴漢をする夢だった。
・
・
・
ピュッ
いたぁっ!
切れたぁ!
ひじ3つ
指ひとつ
うぅぅぅぅ。いてぇ、こえぇ。
もう、眠れない。怖い、眠れない。怖い、眠れない・・・
・・・そうだ!分かったぞ!
眠らなければ寝相なんて関係ない、こんなベッドに寝る必要もないんだ!
眠らなければもう痛い思いなんてしなくていいんだ!わー!エヘヘヘ
私はもう二度と眠らない。
多田
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