●更新日 03/13● 写真
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憧れのあの人の写真を撮りたい


都内でも有数の心霊スポット『千駄ヶ谷トンネル』
先日このトンネルで、ひとつの尊い命が失われました。
多田
亡くなったのは、ここにずっと住み着いていて、以前探偵ファイルの取材にも応じてくれたホームレスの男性。
私はこのトンネルを通る度、彼の笑顔で心を癒されていました。しかしその笑顔はもうどこにもありません。

直接話したことはありませんでしたが、見るもの全てに元気を与え続ける彼は、私の密かな憧れでした。
ただひとつ残念なことがあります。それは憧れの彼の写真が残っていないこと。
残念だ、もう一回会いたい。と事務所でつぶやく私に、誰かがこう言いました。
「あそこって心霊スポットだし、もし心霊写真が撮れたらあの人が写るんじゃないか?

・・・気付けば私は、彼の居た場所に来ていました。
目的はひとつ。そう、霊になった彼の写真を撮ること。
多田

多田
顕花を済ませ、私は彼の写る心霊写真を撮るためシャッターを切りました。

多田・・・
多田・・・
多田・・・

何も写りません。ひと目でもいい、たとえ幽霊でもいいから会いたい。

多田
撮影を続けますが何も写りません。

寒いです。そこに落ちていたワンカップを飲みました。温まります。
多田

どれくらいの時間が経ったでしょうか。少し気になる写真が撮れました。背中のあたりに白い球体が見えます。
露出の関係でこのように写ったのでしょうか、それとも・・・
多田
目立った写真はこれだけ。あとは小さい丸い光がたくさん撮れたぐらいでした。
長時間がんばったのですが、結局彼の写る心霊写真は撮れませんでした。
憧れのあの人の写真を撮りたいという私の夢は終わりました。

深夜の帰り道、町の灯が私に現実を突きつけます。彼はもういないのだと。
しかし私は忘れません。確かに彼はここにいた。



多田


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