●更新日 05/09●


女に追われる男(3)


(1)(2)

その報告書には私の日常が鮮明に書かれていた。
警戒しながら同棲するマンションに出入りする姿や、付き合っている彼女の映像、その彼女の氏名から生年月日まで明確に記されていた。



報告書を最後まで目を通した私は「やられた・・・」という感情は一つも起きず、
むしろここまで完全に調べ上げた探偵社に感心してしまった。
「これ・・・凄いね」と言って目を上げた瞬間、ナイフを持った常連客の姿があった。
彼女は震えながら右手にナイフを持っていた。



恐怖は不思議となかった。
次の瞬間、彼女は何かを叫びながら私の腹部にナイフを刺してきた。

その時のことはあまりよく覚えていないが、走馬灯のように過去のことを思い出していたような気がする。
これで終わりだ・・・と思った私は「ごめん・・・刺していいんだよ」と常連客の彼女に言った。
すると彼女は泣きながら部屋を出て行ってしまった。

彼女が帰った後、自分の腹部の血に驚いた。



私はそのまま傷口を押さえ倒れこんだ。
頭がボーッとして痛みはあまり感じない。
殺されると思ったが怖くはなかった。
なぜ怖くなかったのか、それは未だにわからない。

ただ、あの報告書が私の探偵を目指すきっかけになった事だけは間違いない。



タカヤ



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