●更新日 04/23●


カトウ・サムナックの結末(前編)


荒木です。


タイ人の犯罪逃亡者カトウ・サムナック(29歳)は、同棲相手のアメリカ人女性ジェシカ・モリッツ(25歳)にドメスティックバイオレンスをはたらいて訴訟された。
ベイルボンズのおかげで公判まで自由の身となったが、投獄の恐怖にかられて逃亡。
いつもながら思う事だが、罪の審判を受ける前に逃げるとは許されざる輩である。
モラルを壊せばそれなりのバツを受けるのは当然だが、冷たい鉄格子の小部屋は誰しも入りたくない。
保釈中の逃亡率が高いのはうなずけることでもあるのだ。
また、逃げる犯罪者がいなくなれば我々に仕事は廻ってこないのでそれも困る。
犯罪大国アメリカとハンティングシステムに礼を言うことにしよう。
正義を重んじる国で世のために活躍できることに感謝。


今回の獲物は女性に暴力を振るう悪人、サムナックに照準を定めて初動捜査に入った。
外国人が罪を犯して逃走する場合の大半は母国に飛ぶことが多い。
何故ならば、見知らぬ広大な多州よりも地理に詳しい所のほうが勝手が利いて安心できるからだ。
それがオーソドックスな人間の行動力学である。
私は初動捜査において心理学を応用して逃走経路を割り出すようにしている。
これにより検挙率が向上しているのは確かだ。
プロファイリング術は行方捜査(調査)の基本手段であると云えよう。



まずは街の偽造屋に聞き込みをおこなった。
案の定、サムナックは他人名義の偽造パスポートを入手していた。
次に、LAX国際空港で渡航記録を確認してタイランドに高飛びを図った事を調べあげた。

南国のアジアが好きな私は当然ながらタイランドには幾度も訪れているので追手として好都合である。
また、以前に外国人詐欺師を追跡したときに地元警察と合同でおこなった事もあって当局の協力も受けられるのも幸いだ。
詐欺師とともに地元マフィアをも立件して表彰されたのでタイ警察には貸しがある。
だが大半の地元警察がマフィアと癒着しているので注意を要するのも事実だ。
東南アジアでは言われもない罪を着せられて刑務所にブチ込まれるケースも多いので、ハメられないように心掛けている。
私は手早く身支度を済ませると飛行機で一路タイランドへと飛んだ。



現地に着いて最初の捜査はサムナックの実家であるバンコック近郊のパタヤへと足を運んだ。
近所でアメリカドルをチラつかせて聞き込みをおこなったところ有力な情報を得られることができた。
それはサムナックがプーケットに住む兄夫婦の家に身を寄せている最中だということであった。
私は躊躇せずにその手掛かりを基に即座に現地へと向かった。
時に情報はガセの場合も有り得るが、その人物の目を見れば信頼性の有無は大概は判る。
無論だが長年の経験がなければ無理な話しではあるが。

サムナックの兄夫婦はプーケット郊外の静かな場所に家を構えていた。
そこで私はサムナックを確認するために張り込み態勢に入ることにした。


つづく



バウンティハンター



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