●更新日 01/14●

ブチ切れたA子さんの場合


百貨店と、百貨店に入れているメーカーの関係を御存知だろうか?

1.百貨店はメーカーに販売場所を提供し、
2.メーカーは売り上げの何パーセントかをマージンとして百貨店に渡す。
というもの。



つまり、どのメーカーを店に入れるかは百貨店の胸一つ。
このように圧倒的に力関係が違い、しかも立場の弱い側が女性だった場合、しばしば発生する問題がある。

メーカーの営業社員だったA子さんの場合。
百貨店の売り場主任に「次期も君の会社を強く推そうと思っているんだけどねぇ」などと言いつつ言い寄られた。
今後の契約を考えれば邪険にできないA子さんは、強引にラブホテルの駐車場まで連れ込まれてしまう。
嫌がって抵抗するA子さんに、主任は「この業界はきびしいんだよぉ〜」と言いつつ、首筋を「ベロ〜リ」と舐め上げた。

ここでA子さんはブチキレる。

「どうして、やらせないんだ」
「そんなに嫌がっていいと思ってるのか」
「他の女は素直に(ホテルへ)入ったぞ!」

などと怒る主任を、力一杯はり飛ばし、ホテルの駐車場から逃げ出してしまった。


数日後。A子さんの会社は百貨店から「取引停止」「出入り禁止」の通達を受けた。
既に決定していた契約が撤回され、発注した商品は在庫として余り、しかも、今後、一切の取引ができなくなってしまったのだ。
大変な損失だった。

話を聞いたA子さんの上司は、叱ることなく、怒ることなく、ただ悲しげにこう話した。

「気持ちはわかるし、向こうに非のあることでもある。しかし、この業界ではこういったことは当たり前のようにあるんだ。
おまえの方にも隙があったんじゃないのか……どうして、うまくあしらってくれなかったんだ……」

結局、その後、A子さんの会社は倒産してしまった。

セクハラが発覚した後、男性側がよく言う言葉がある。


「嫌なら、嫌だって言えばいいのによぉ!」というやつだ。


もし、嫌だと言えば、思いつく限りの仕返しをするに決まっているのにである。

「嫌がる町娘と悪代官」というのは、なにも時代劇の中だけの話ではないようだ。





九坪


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