あやしい広告の裏側

〜 インチキだけど嘘ではない 〜



以前に、株式会社エルセが販売している「ライスチャーム」という開運商品を購入したけれども、まったく効果が出なかった村上さんのお話を掲載致しました。


そうしました所、読者の方より「手ぬるい。もっと詳細に検証しろ」というメールが殺到しまして…。
正直、皆さんもかなり関心を持っているところなのかと思いました。
探偵ファイルでは、その後、追加調査をしていたところ、なんと実際にその手の広告を作っていた方とコンタクトをとることに成功しました!
今回は、その方より頂いた情報をもとに追加調査をした内容を掲載致します。

山木:こんにちは。Aさん(仮名)は、以前にこのような広告を実際に作っていた会社にいたとか...。
   いきなりの直球で申し訳ないんですが、この手の広告って、どんな感じなんですか?


写真1
あくまでも、イメージ画像です


A氏:一言で言えば、インチキです。でも、嘘ではありません。

いんちき(名)
勝負事・賭博などで、相手にわからないように不正をすること。 いかさま。「―をする」
(名・形動)ごまかしや手抜きがあったり、にせものであったりすること。 ほんものでないこと。また、そのさま。「―商品」「―なやり方に引っかかる」
うそ【嘘】
(1) 事実を曲げてこしらえたこと。本当でないこと。偽り。「―をつく」
(2) 誤り。間違い。「―字」
(3) 望ましくないこと。すべきでないこと。「ここであきらめるのは―だ」

山木:微妙な言い回しですね。ハッキリ、嘘だと言わないところが憎いですよ(笑)この手の広告は、
   エルセさんだったら、そこの会社自身が作っているんですか?それとも、代理店が??
A氏:会社によっては自分達で作っているところもあるんでしょうけど…。広告代理店に委託している
   のが通例ですね。エルセさんの広告を拝見しましたけど、とても良くできていると思います(笑)

山木:同業者から見ても秀逸なんですね(笑)では、一つ一つ検証をさせて頂きたいのですが、まずは
   全体的なことについてです。海溝で見つかった秘宝とか、インドの聖なる米だとか広告にはあり
   ますけど?
A氏:全部、創作です。その手の広告を専門に引き受けているライターが存在するんですよ。どの広告
   の文章も何となく似ていませんか?

山木:専門のライター!なるほどね〜。でも全部創作となると、法律的にヤバイ記述部分とか、クレー
   ムの際に突っ込まれたら答えられなくなる部分ってあると思うんですが・・・。その辺の対策って、
   どうしてました??
A氏:クレームに関して言えば、全然平気です。探偵ファイルで掲載されていたようなクレーム処理を
   します。“はぐらかす”のと“煙に撒く”のを基本にした話法なのですが、雑誌くらい厚みのあ
   るマニュアルがあるんですよ。扱っている商品が、ああいうものである以上、クレームは来るも
   のと思ってやらないと。

(クレームを前提として商品を売っているということらしい)

A氏:それと対応している人間は、クレームの内容なんて聞いちゃいません。その場、その場をマニュ
   アルに沿って対処してるだけだから、下手すると話してた内容すら覚えてないかもしれませんよ。
   その村上さんとやらが本気でエルセを凹ませたかったんなら、5時間でも6時間でも文句言うの
   が正解だったんです。真面目に聞いてない分どこかで辻褄が合わない事を言うハズですからね。

山木:応対のテープを僕も聞かせてもらったんですが、確かに「手慣れてるな〜」とは思ったんですよ。
   やっぱり、そういうマニュアルがありましたか。じゃぁ、法律的なことを聞いていいですか?
   "通信販売法に基づく誇大広告の禁止について(※1)" は、どういった対応をしているんですか?
A氏:アレにはね、"抜け道" があるんですよ。良く言われているのが、"完璧" と "永遠" という言葉
   を使ってはいけないとされています。例えば脱毛を例に出すと、通販で売っている程度の機器で
   は永久脱毛は不可能ですから「永久」という言葉は使えません。でも、「完全脱毛」なら大丈夫
   なんですよ。他愛もない言葉選びなんですが、そんなもんなんです。

山木:いや、それは立派な誇大広告なんじゃ?エルセさんの広告にしてもそうですが、思いっきり誇大
   表示でしょう?
A氏:なら、何をもって誇大だというのか、何を基準にして誇大なのかを立証してくださいってことに
   なるんです。私がいた会社も、何度となく都庁の薬事課に呼ばれましたが、向こうも面倒くさい
   んでしょうね。大抵は注意で終わりました。で、もし「指導」が入ったら商品名を変えればいい
   んですから。(※2)

山木:なるほど。もうクレームや行政からの連絡は覚悟の上なんですね。じゃぁ、掲載する雑誌社の方
   からは何も言われないんですか?「こんな商品扱う広告は載せられん!」みたいな形では??
A氏:何言ってるんですか! 雑誌がそんなこと言ってくるわけないですよ。普通の雑誌に1ページ広告
   を出すと、料金は280万円かかるんです。雑誌社から見れば、ありがたいお得意先なんですから!
   (※3)収益の大半を、広告収入に頼っている社だって有るんですよ。

山木:良い売り上げになるから、インチキな広告であっても、雑誌は黙認してしまうってことですか。
A氏:有り体に言ってしまうと、そうです。


いかがでしたでしょう?こういった商品を扱う業者は最初から騙すつもりでいるわけですから、どんなクレームをつけたところで、煙に撒かれてしまいます。 しかも、法律の抜け穴を通るような表記をしているから、法的にも取り締まれない。...というように私は感じましたが、皆さんはどう思われましたか?

騙す人間がいるから、騙される人間がいるわけで、それは市場原理かも知れませんが、何か物悲しいものを感じさせてくれます。 そして、広告収入の為に掲載してしまう雑誌。 「もともと、こういうのに引っかかるやつがアホ」ということを前提に、行政にしても売る側にしても物事を運んでいるような...。
皆さんからの、ご意見、ご感想をお待ちしています。------> spy@tanteifile.com


次回は、インチキ商品の裏側を紹介いたします。



※1[誇大広告等の禁止]第12条
販売業者又は役務提供事業者は、通信販売をする場合の指定商品若しくは指定権利の販売条件又は指定役務の提供条件について広告をするときは、当該商品の性能又は当該権利若しくは当該役務の内容、当該商品の引渡し又は当該権利の移転後におけるその引取り又はその返還についての特約その他の通商産業省令で定める事項について、著しく事実に相違する表示をし、又は実際のものよりも著しく優良であり、若しくは有利であると人を誤認させるような表示をしてはならない。

※2
行政指導が入ると、「その商品名」で売ることに関して問題が発生する。 そのまま放置しておくと、警告→告発となる。

※3
ここでの話は280万とあるものの、雑誌により広告料金もピンキリである。 たとえば若者向けのファッション誌などは、値引きに値引くことができるが、それでも40万円はかかる。 発行部数が多く、本を定価で売るだけで黒字が見込める雑誌ならともかく大抵の雑誌はその収入を広告にも頼っているのが現状。 「広告とれない雑誌は悲惨だよ〜」「広告をとるという目的があるから、ほとんどの雑誌は発行部数を公称では水増しするんだよね」とは知り合いの雑誌編集者の言葉。 余談として、広告掲載料は少年誌、男性誌よりも女性誌の方が高くなる。 しかし、女性誌の中でも高級感のイメージを出すことを主体においている雑誌は、決して、この手の広告は扱わない。 今読んでいる雑誌の広告にどんなものが載っているか、一度そういった点から眺めてみてはいかがだろうか。




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