●更新日 11/11●


現代社会が作った幻想?杉沢村伝説


杉沢村という名をご存知の方も多いだろう。
「陰惨な大量殺人により、地図からも消されてしまった村があった。その村の入り口には、髑髏に似た石がある。或いは古びた鳥居が目印である」
こんな内容の噂が駆けめぐり、日本中のマニア、マスコミを巻き込んで大騒ぎとなった。
それが「杉沢村伝説」だ。
「この場所こそが、本当の杉沢村だ!」
「ついに、杉沢村の入り口の謎を発見した!!」
と多くの情報がよせられた。
日本中が探偵気分で杉沢村捜索に借り出されてしまったのだ。
津山三十人殺しや横溝正史の作品のような、過去の事件や小説、映画などで日本人の深層心理に、「山村=陰惨、閉鎖的、事件」という潜在的イメージが形成されていたのだろう。

そして迎えたインターネット時代に登場したのが「杉沢村伝説」であった。

同時に類似の村伝説も各地で噂が広まった。
心霊スポットとして知られる犬鳴峠の付近にある「犬鳴村」は、近寄る若者に鎌を持っておいかけてくる殺人鬼がいるとも言われたが、実はそんな村は存在しないという事になっている。
アメリカからやってきた殺人者がジェイソンのマスクを被り、村人を殺しまくる「ジェイソン村」。
(これは、ジェイソンのソンが「村(そん)」と重なるため、洒落が都市伝説を生んだのであろうか。)
他にも、神への生け贄のために、戸籍のない子供を育てる「生け贄の村(或いは島)」、村人全員が死亡していて、夜になると蘇る「死人村」、
奇病ばかりの山村などなど、「○○村伝説」は、都市伝説の人気分野となった。
それもこれも「杉沢村効果」である。



ここに、筆者が確認した“杉沢村の真相”を記しておく。
まず杉沢村は、今も昔も存在しない。
というか存在するはずがない。
何故なら、”杉沢村はメデイアによって作られた村”なのだ。
一部青森県にあった「小杉」という地域が杉沢村のモデルとなったという解釈もあるが、情報操作に踊られた結果、偶然似た廃墟エリアがあっただけの後付結論なのだ。

つまり、政治的に地図から消されたというわけではなく、小杉が杉沢村という呼称に変じたわけでもなく、青森で発生したある殺人事件をもとに創られた架空の村であるという事だ。
この事件の関係者は存命なので、具体的な事件名は伏せるが、数人レベルの殺人事件であり、大量殺人というには憚られる。
つまり、そのような殺人事件に、津山事件、横溝正史のエッセンスを加味し、意図的に操作された情報であるのだ。
元々、杉沢村伝説は、心霊作家・山岸和彦氏(中岡俊哉氏と仕事を共にした自他共に認める後継者)の「日本の七不思議」の投稿から、マスコミを通じて広まった都市伝説であるのだ。
彼はフジテレビのアンビリバボーの企画・情報収集ブレーンも一時期努めており、番組内での「杉沢村伝説」をブラウン管で全国に広げた一人でもあるのだ。
整理すると、青森の大量殺人(といっても数人程度)をもとに投稿・サイト・テレビと経過する度に巨大化していった都市伝説であるのだ。
ひょっとすると我々現在人は、村(=生まれ故郷)を捨てた自分の後ろめたさを、杉沢村の殺人犯に重ねていたのかもしれない。
故郷や自然を破壊し、生きていく文明と現代人。
だからこそ「杉沢村」は、人々の心に架空の村として存在したのであろう。
つまり、「杉沢村」を探し廻った我々は、自分の故郷を探していたのではないだろうか。



山口敏太郎



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