●更新日 08/16●


ゴム人間騒動顛末期〜都市伝説・現代妖怪ゴム人間誕生


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イラスト:SEL

「山口敏太郎の怪奇探偵」に相応しい一回目の内容は「ゴム人間騒動顛末期」である。この平成の世を震撼させた不可解なゴム人間の誕生秘話と共同幻想の裏側をここに公開しておこう。
「真・都市伝説」(竹書房)にて、「“ゴム人間“目撃タレント続出の裏で蠢く芸能界金脈」という記事が掲載された。内容は的場浩司、石坂浩二のゴム人間目撃談、更に「ジョジョの奇妙な冒険」で広く知られる荒木飛呂彦のゴム人間兄弟との遭遇などを紹介、この記事の中には筆者の名前も出てくる。
「オカルト業界は静観です。ネットを調べれば分かりますが、山口敏太郎氏が東スポと内外に記事と写真を提供したぐらい。ゴム人間や小っさいオッサンで大儲けしてる人なんていないですね」
と書かれている。最後には、
「”ゴム人間&小さいオッサン“騒動とは、大儲けしようと企んだ一人の黒幕がいるワケではなく、タレント、オカルトライター、芸能事務所、番組制作者の”それぞれの小さな利害“が一致を見て完成したクリーチャーだったのではないだろうか」
という結論で結んでいる。
まぁ、この記事は大筋間違えてはいないし、好感も持てる。だが、やはり器用な編集プロダクション、オカルト好きなライターが書いた分析の範疇でしかない。後年「あのゴム人間騒動とは何であったのだろうか?」と、都市伝説研究家やライターたちが考察するにあたり、参考にしてもらうべく、山口敏太郎の知りうる裏側を明らかにしておこう。
まず、筆者は現代妖怪の研究作業としてテレビ番組における芸能人の不思議な発言を記録している。有名人の一言が広がり、都市伝説や現代妖怪が成立することも多く、「ダウンタウンDX」や「ごきげんよう」「笑っていいとも」「サンデージャポン」などから多くの流言や風聞が生まれ、稀に都市伝説まで昇華している。
ゴム人間の誕生きっかけは、「ダウンタウンDX」である。この番組では的場浩司が披露する不思議話が定番になっている。今までも「クーラーの隙間にいる鳥人間」「驚いた牛が垂直に飛び上がった事件」「小さいおっさんに髪の毛をドレッドヘアーにされた話」「峠で出会った女の幽霊の話」など多くの不思議話が視聴者を驚かせてきた。中でも「友人の車で移動中、顔色が緑の怪人を見た」という話は大きな反響を呼び、視聴者からも「ゴムのような女の怪物」「ピンク色のゴム男」など数々の目撃談が寄せられた。

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イラスト:増田よしはる

ここで大事なポイントを指摘しておいこう。ゴム人間騒動の発火点は、芸能人の目撃談先行・番組の意図的なやらせで起きたものではなく、視聴者からの大量のゴム人間情報の葉書が紹介された事から始まったという事実である。つまり、ゴム人間は最初から、日本人全体が持つ“共時性を付帯した幻想談”であったという事である。また、ひとつ重要な事は、この時点で的場浩司はゴム人間を「ゴム男(ごむお)」と呼称している点である。
このダウンタウンDXにおけるゴム人間騒動に乗っかってきた有名人がいる。あの名優・石坂浩二が「自分も信号待ちの時に、緑色の顔をした人間を見た」と証言したのだ。的場の証言を聞き驚いた石坂は、本人自ら番組に売り込み、「的場浩司、石坂浩二」というダブルコウジによるゴム人間証言となったのである。
この経過を見ていた筆者は、この「都市伝説はおもしろい」と着眼していた。そして2007年1月明治神宮を参拝中のNさんという女性から電話があった。彼女は俗にいう不思議少女であり、霊や妖怪が見える人であり、筆者のライブやツアーの常連であった。彼女の話では
「明治神宮に(同行している)お母さんには見えないが、自分には見える人がいる。その人は体全体がくねくねしていて、顔色が紺色っぽい怪人なんです」
というのだ。なんだか知らないが、とんでもない事態が起こっているらしい。筆者は直感でいけると確信し、撮影を促した。
そして、送られてきたのが、明治神宮に参拝する頭部の長い怪人の写真であった。

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タートルカンパニー所蔵

この写真を筆者はすぐさま東京スポーツ記者のM氏に転送した。そして、東京スポーツの一面での掲載が決まったのだが、この時「ゴム男(ごむお)」では語呂が悪いということになり、筆者が「ゴム人間」という呼称を選び、呼称統一することで決定した。この時、何故「ゴム人間」にしたかというと、語呂がいいのは勿論のこと、漫画「ワンピース」の影響で「ゴム人間」という音の響きが人々の頭に入りやすいという事も考慮していた。
また記事を形成する上で的場浩司と石坂浩二の事務所にコメント出しを依頼したが、的場浩司氏の事務所はNGだったものの、石坂浩二のコメントはもらう事ができた。「自分が見たのと色は違うが似ている」というものであった。石坂浩二のコメントがついた時点で東京スポーツのM記者と筆者は、“いける!!”という直感を確信に変えた。
この時点で、的場浩司に石坂浩二が乗っかり、更に山口敏太郎と東京スポーツが乗っかるという図式が成立した。



山口敏太郎



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