●更新日 05/29● 写真
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足音が止まらない!


これは、私の友達である美奈代が体験した話です。

女性なら、かなりの寒気がする話ですよ・・・


――――

私は特別美人というわけでもないのだけど、自分で言うのも何なんだけど結構モテる。

カッコ良い殿方にモテれば良い気持ちになろうというものだけど、実際は違って、変な人から・・・。

今で言う、ストーカーという奴。

合コンで会った人や、職場で知り合った人。友達に紹介して貰った人にいたるまで、結構な確率で痛い男に付き纏われてしまう。

何度も何度も繰り返しそんな目に遭っていると、慣れとは怖いもので「あぁ、また今回もか」と達観出来る立場になってしまうものだ。

実際はストーカーなんて付いて欲しくないし、夜道を後ろから尾されたら怖い。

腕付くで来られたら、さすがに不味いわけだから。

しかし、待ち伏せをされるとか、尾行をされるくらいは「またか・・・」と思えるくらい、私も慣れきっていた。


去年の6月のこと。

雨がかなり強く降っており、夏が近い気温は非常に不快指数を上げるそんな夕方。

会社が終わり、正面出口から出た時から何か違和感はあった。


暫く駅に向かって歩いていると、さらに違和感は増す。

(尾けられているような・・・)


後ろにそんな気配を感じる。誰だろう?

この間の合コンの男だろうか? 義理でメアドを教えたら、毎日のように「今何してるの?」というメールが来るようになった。

私にそんな気はないから無視しているのだけど、一向に止まない。

しかし、軽く粘着気質だとは思うけど、まさか会社調べて待ち伏せするとまでは思わないのだけど・・・







相変わらず気配がする。会社から駅。電車乗って最寄駅。

歩く速さを変えてみても、相変わらず付いてくる。気のせいじゃない。

ここから脇道に入ると、家まで道は暗いし、人通りも少なくなってしまう。さすがに家まで来させるわけには・・・

脇道に入らず、大通りを歩く。しかし、今夜は大通りも人がいない。


カツーン

カツーン

私のヒールの音。そして、それに付いてくる、「カタ、カタ」という足音。革靴?


カツーン、カツーン(カタ、カタ)


カツーン、カツーン(カタ、カタ)



冗談じゃない!


私は傘を閉じて走り出した。こんな足音が聞こえる距離まで近づいて追ってくるなんて普通じゃない。

しかし、

カツン、カツン!!(カタ、カタ)

カツン、カツン!!(カタ、カタ)


一向に足音は止まらない。私が走り出したら、向こうも走り出した!?

怖いけど、ここで止めないとどんどんエスカレートしてしまうだろう。駅前に戻るにしても、何をするにしても、今の場所はどんどん暗くなるだけ。止めるなら、ここで止めるしかない。


「何なの、一体! 貴方、誰!?」


後ろを振り向いて一喝したけど、誰もいなかった。そんなはずは・・・ない。

私の気のせいってことはない。いないのは、隠れたから?

そんなはずは・・・。

歩き出すと、また聞こえる。


カツン、カツン(カタ、カタ)

カツン、カツン (カタ、カタ)


誰もいない・・・はずはない・・・!


もう、怖くなって私は傘を捨てて全力疾走で走り出す!

家に帰るのは危ない。このまま走り切って、隣町まで行こう。

走っている時、また足音が聞こえる。


カツン、カツン、カツン(カタ、カタ、カタ)


「何なの!本当に!」


色々な意味で耐えられなくなった私が足を止め、後ろにまた一喝しようとした時



・・・カタ



足音が余分に聞こえた。


「いゃぁぁぁぁ!!!!!」


―――――――――


美奈代がその後どうなったかというと、その叫び声を聞いて巡回中の警察官が飛んで来たそうです。

そして彼女を保護し、調書を取りに警察署まで行ったというところでこの話を御仕舞い。数日は警察官が巡回に来たり、パトロールをしてくれたそうですが、何もその後は起きず、今に至ります。

足音は結局誰だったのか解りません。

本当にストーカーだったのか。ストーカー以外の何だったのか。

美奈代が好かれ易いのは、ストーカーだけ・・・?



西垣 葵 西垣葵


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