●更新日 01/22●  
			
				
				
				真夜中の電話
 
  
				
				
			 
			
				
				これは、私の元に相談が来た横井さん(23歳・仮名)が体験したお話です。 
				 
				若い人で携帯電話を持っていない人は殆どいません。 
				この便利なツールが世の中に広まったおかげで、メールを含めればいつでも連絡取れるようになりました。 
				でも、親しき中にも礼儀あり。私みたいに時間に関係ない仕事しているならともかく、大抵の社会人・学生は深夜の1時過ぎたくらいからはメールも電話もしなくなります。 
				相手の電話が音なれば起きてしまいますからね。 
				横井さんも、友達や彼氏には1時過ぎたらメールしなくなるタイプでした。 
				 
				 
				ある日のこと――― 
				 
				 
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				ラララーラーーーラー 
				 
				聞きなれた着信メロディが鳴った音で私は目を覚ました。このメロディは正志に設定してあるから、掛けてきた人も当然ながら解る。 
				ふと、時計を見ると午前3時48分。普段なら誰からも電話なんて来ない時間。 
				その非常識な時間だけに、何かあったのではないかな・・・と思いつつ、電話に出た。 
				 
				 
				「今、何時よぉ・・・何??」 
				 
				「うんと・・・今日、会えなかったら、声聞きたくて」 
				 
				その日、正志とは休みの日曜だったけど会わなかった。私が女友達との約束を優先したからだ。 
				恋人から声聞きたいという理由で電話あれば、それはそれで嬉しい。だけど、そんな理由で3時過ぎに電話してくる正志にカチンと来たのもまた事実だった。 
				 
				 
				「はぁ??今、何時よ!私、明日も仕事あるんだよ!」 
				 
				「いや・・・でも、どうしても声が聞きたくて。ごめんね」 
				 
				 
				「ごめんね、じゃないわよ!解ってるならやめてよ!」 
				 
				「ごめん。でも、どうしてもなんだ。最後だから」 
				 
				 
				その最後の意味がいまいち解らないものの、「何なの?何か相談でもあるの?」とかぶっきらぼうに答えていると、向うの正志から「もういいよ」と電話を切られた。 
				 
				何て勝手な奴なんだろう。 
				 
				電話をソファーの方に投げつけ、私はまた寝ることにした。 
				そして翌日から、正志からの連絡がなくなった。どんなに連絡無くても今まではせいぜい一日だったのが、もう二日目。 
				あの日の私の態度が彼を硬化させたのだろうか。 
				私から謝るのも癪だったけど、こんなことで喧嘩しても仕方ない。「何してる?連絡ないよ??」とだけメール打った。 
				私から歩み寄れるのは、これくらいが精一杯だ。 
				 
				 
				・・・連絡が途切れて4日。いい加減、腹立ってきた。 
				まさか自然消滅狙ってるなんてことはないだろうけど。 
				 
				 
				・・・一週間。 
				 
				限界だ。もう、こっちから別れてやる! そう思い、私から電話を掛けると、見知らぬ女性が出た。一瞬で頭に血が昇りそうになるが、彼の母親だった。 
				そして次のセリフに、私はワケが解らなくなってしまった。 
				 
				 
				「ごめんねぇ・・・正志に彼女がいるのは知っていたんだけど、誰かが解らなくて。携帯はその時に壊れてしまっていて、連絡が付かなかったのよ。直せば、誰からか連絡来ると思って直したんだけど・・・」 
				 
				 
				彼の母親曰く、正志は交通事故に遭って死んだ―――とのこと。 
				 
				 
				いつ!? あの電話があった一週間前は少なくても生きていた。じゃぁ、いつ!!? 
				 
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				事故に遭ったのは、月曜日の早朝。 
				 
				早朝?私に電話来たのは3時過ぎなのだから、その後だろう。交通事故・・・ 
				 
				 
				でも気になる。一つだけ。一つだけ気になる。 
				 
				正志は「これが最後だから」と言っていた。何が最後だったのか?私と話すのは最後になってしまったわけだけど、まさかそれを知っていたわけではないだろうし。 
				 
				そもそも、何の為に電話をかけてきたのだろう。彼は用がなければ、そんな3時過ぎなんて時間に今まで一回も電話をかけてこない人だった。もっと理由を聞いてあげるべきだったのか。 
				 
				 
				いずれによせ、正志はもう――――いない。 
				
				 
				 
				 
				
				西垣 葵
				  
				
				
				
				
				
			 
			 
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