●更新日 11/13●

手招きする母親(百物語)


これは、私が4歳くらいの頃の話です。
まだ一人では怖くてトイレにも行けない幼さでした。

ある晩、ふと母親に起こされ目が覚めました。
母親は部屋の出口近くに立って、私を手招きしています。
眠い目をこすりながらトボトボと出口に向かうと母親は私を待つことなく先に行ってしまいます。

部屋を出ると、今度は玄関のポーチ付近に立ち私を手招きしています。
私は玄関まで歩いて行く前に、やはり母親は先に行ってしまいます。

子供なので時間をかけて靴を履いて玄関を出ると、
今度は敷地の外の不自然な場所に母親が立っています。
やはりこちらを見て手招きをしています。
真っ暗な庭を2,3メートル歩いたところで、私は「これ以上行ってはいけない」と直感的に感じました。

写真

結局、手招きする母親を無視して庭先から自室のベッドまで戻ったのですが、
戻る瞬間、母親の顔は見る事ができませんでした。見てはいけない気がしたのです。


庭先に出るまでは恐怖感が一切なかったのに、
ベッドに戻るまでの道のりはとても怖くて震えていたのを鮮明に覚えています。

翌朝、母親に昨夜の件を尋ねてみると、「そんなことはしていないよ」の一点張り。

ただ、玄関の鍵が開いていたのと、靴を脱ぎ履きした形跡は残っていました。

その頃は「子供が寝ぼけていた」という形で誰も追及しませんでしたが、
この件はいくつになっても鮮明に覚えていたので、大人になったある時、
何の気なしに住宅地図を拡大し、母親が呼んでいた場所にひとつひとつ点を打ってみたのです。
その点を結んでいくと見事に一本の直線になりました。

そして、その延長線上に線を引いていくと
あることがわかりました。

途中でついていくのをやめた私が、次に呼ばれていただろう場所・・・
それは自宅近くを通る国道の死亡事故多発現場だったのです。

写真



Yossy Shige



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