●更新日 11/12●

隣人の家庭菜園


私は小学生の時、神奈川県のあるマンションに住んでいました。

マンションもアパートも集合住宅ともなると、必ず一人は悪い意味で有名な住人がいるものです。

5階に住んでいる村田さんご夫婦(仮名)はその典型的な有名人。

旦那さんは普通の仕事をしていらしたように記憶していますが、実に線が細く雰囲気が儚い方でした。

村田さんご夫婦が有名なのは奥さんによるもの。

ある新興宗教に入信されていらしたようで、マンションの住人となると誰かれ構わずに勧誘するものだから、皆から煙たがれていたのをハッキリと覚えています。またおかしな御香を焚いていらしたようで、異臭だとクレームを管理組合に付ける他の住民の方とのトラブルが続出し、その度に村田さんの旦那さんが謝りに行っていたそうです。

私も母から「葵、村田さんのオバサンに声掛けられても絶対に付いていっちゃいけませんよ」と言われたものでした。

その村田さんの奥さんがある時期から家庭菜園に夢中になったようで、自家製の健康に良いというお茶を近隣の方々に配り始めたことがありました。

もちろん、普段からの奇行が災いしてか誰もその貰ったお茶を口にした人はいません。


今思えばそれが良くなかったのかも。


村田さんの旦那さんが見る見る内に痩せ始めました。元々線の細い方でしたが、幼かった時の私でもハッキリと解るような肉の削げ方は幽鬼を想像させるほど。

1ヶ月も経たない内に全く生気の無い顔になり、病人としか思えない外見に!

ある日、マンションのエントランスで倒れているのを管理人が発見し、119番。そのまま入院となったそうです。


丁度私の母が救急車が来た騒ぎの時にエントランスに居たので、ここからは母から聞いた話なのですが、その騒ぎに村田さんの奥さんがやって来た時にこう話していたとか。


「だから、あのお茶を飲みなさいって口を酸っぱくして言っていたのに言うことを聞かないから。健康を悪くしているんだから、健康に良いお茶を作ったっていうのに不味いから飲みたくないだなんて・・・罰が当たったんだわ」


どうも、ずっと奥さんが作ったお茶を飲まされていたものの、不味いから飲みたくないと拒否した旦那さんに罰が当たったのだと鼻息荒くして話していたそうなのですが、母達他の住人の間で持ち上がった疑問が「お茶を配り始めた辺りから、旦那さんの様子がおかしくならなかったっけ?」というもの。


その二日後。

私が学校に行く際にパトカーが何台もいたのを覚えています。

帰って来てから母に何だったのかを聞くと、村田さんの奥さんが逮捕されたとのことでした。


写真

村田さんが健康に良いと栽培していたお茶は、実は毒草も混じっていたとか!

常飲させられていた旦那さんは非常に危ない状態だったそう。

何でそんなのを健康に良いという話で持ってきたのかは解りません。ですが・・・




健康を悪くしているんだから、健康に良いお茶を作ったっていうのに不味いから飲みたくないだなんて・・・罰が当たったんだわ



村田さんの奥さんに悪気は全くないのでしょう。むしろ、良いことをしているのだと信じていると思います。

だからこそ不幸が。


私も母もこの時の村田さんの出来事が有ったせいでしょうか。誰かが家で作った「自家製」という食品を口にするのが凄く抵抗が起きるようになりました。



西垣 葵写真


探偵ファイルのトップへ戻る

前の記事
今月のインデックス
次の記事