●更新日 08/23●

旧墓地上の新興住宅地


同じ沿線に住む知人と、会社の帰りに偶然同じ電車に乗り合わせた時のことだ。

「最近、散歩する時間帯を変えたよ。なんか毎晩、肝試しみたいでシャレになんねぇからさ」

ふたりとも中年ど真ん中。
ともに健康管理も兼ねて散歩が趣味である。

彼の歩く時間は、たいてい帰宅後の0時頃。
家が東武伊勢崎線「K」駅の近く、田舎なので治安の心配がなく深夜の散歩は快適だと言っていたのだが、東武線と交差する武蔵野線沿いの1画にくると民家の屋根が発光しているように見えたり、終電後にもかかわらずかすかに電車の地響きが聞こえるというのである。

怖がりなくせに好奇心旺盛な私は、イヤがる彼を説き伏せて、休日前に一緒に歩く約束を取りつけた。



そして当日。
私も5年前までは、その最寄り駅を利用していたので土地勘はあるのだが、あまりの変わりようにビックリした。
一面が荒地で、その中ほどに古い墓が点在していた場所はすっかり整備されて住宅が建ちならんでいるではないか。
墓が点在していたところにも祠(ほこら)が残されているだけで…

写真
この一帯に墓がポツンポツンと点在していた

写真
散歩中のショット。特に霊場という噂は聞かないのだが…

これならば知人の見聞きしたこともうなずけると思われた。
黙っていたが、もともとこの辺りはJR武蔵野線を通す時にも墓地を移動させており、地響きの話は以前からあったのである。
当然、墓を移す際にはどこぞの住職が来てお祓いや供養をしたそうだが、引き取り手のない墓もいくつかあったらしい。

救いなのは新住宅街から引っ越していった家族が皆無だということ。
実際に住んでいる人には何ら影響も被害もないとのことだ。

写真
近くにある神社のすぐ脇までマンションが建てられ、一帯が建設ラッシュであることがうかがえる。
墓を移動させても開発をすすめたことは、いわば自然の成り行きだったのかもしれない・・・


写真
こちらは別の神社の参道。すぐ横で一戸建ての建設中
(注:上の2ヶ所は旧墓地上ではありません)


ただ、私が知人の立場だったとしても散歩のコースを変えるだろう。
荒涼とした以前の墓地だった光景を今でもはっきりと覚えているし。
この日は目撃しなかったが、散歩を続けていたら、いつの日か遭遇しそうで怖いのが大きな理由である。



デイブ高瀬


探偵ファイルのトップへ戻る

前の記事
今月のインデックス
次の記事