●更新日 06/22●

あの世へのいざない


家族で千葉県の九十九里へ海水浴へ行ったときの事だった。

体験者は、東京都内在住のSさん。

その日は天候もよく、絶好の海水浴日和。
車から砂浜へ荷物を運び入れる準備をしているときだった。
日本人形を抱いた1人の5歳ぐらいの女の子がSさんの元へ近づいてきた。

「およぐの?」
「ん?あぁ。泳ぐよ!」
「やめたほうがいいよ」
「え?」
「だって・・・」


「みおにさらわれてしんじゃうから」


そう言って少女は立ち去った。


なんか気味が悪いな・・・と思いつつSさんは家族と浜辺でお昼を食べることに。

午後からは波も穏やかになり、砂浜も多くの子供たちでいっぱいだった。

写真

Sさん一家も昼食を終え、子供たちを連れて砂浜へと足を向けた。

波打ち際でビーチボールで遊んでいたとき、一瞬突風が吹きボールが海面に飛ばされた。
風と波でボールはどんどん沖へと流されていく。Sさんは海に入り、ボールの行方を追いかけた。

十数メートル泳いだときだった、Sさんの身体が強い潮流によって沖へと流されはじめる。


その潮流の正体は離岸流だった。


ものすごい速さで、岸から離れていくSさん。
身の危険を感じて、ボールを追うことは止めて海岸に向かって泳ごうとした。
しかし、いくら泳いでも沖へ流され、ついにSさんは力尽きて海中へ引きずり込まれた。

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海中には、浜辺で会った少女が抱いていた日本人形が、こっちへ誘うかのように立っていたのだ。
「もうダメだ・・・死んでしまう」
なんとか海面へ顔を出し、息継ぎをした瞬間、何かに足を引っ張られ、またもや身体は海中へと。


そのとき、日本人形の傍らに見たもの・・・それは・・・。


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横たわる、子供の遺体だった。

Sさんは心の中でひたすら念仏を唱えた「成仏してくれ・・・」
その後、潮流が弱まり自力で岸へと帰ることが出来たSさん。

沖の海中で見たことを、地元の監視員へ伝えた。それを聞いた監視員は驚きを隠せない。
なんでも、去年の夏に女の子がこの海水浴場で行方不明になったのだと言う。
Sさんの証言を元に、海中からその遺体は引き揚げられた・・・日本人形と共に。


地元の人は、離岸流のことを“水脈(みお)”と言う。

「みおにさらわれてしんじゃうから」

女の子は離岸流によって命を落としたのであろうか・・・。



まなみ


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