「夜、寝ようとするといつも始まるんだ、ここ一週間はほとんど寝付けていない。この間は、プラットホームで突き落とされそうになった。チクショウ、何で俺が・・・」


情緒不安定になっており、端的に発せられた言葉をまとめるのには時間が掛かったが、何とか筋道を立ててみると、「稲村が何者かにより狙われ、嫌がらせを受けている」ということらしい。
夜になると無言電話が掛かってきたり、窓に石を投げつけられていると言う。
身に覚えがあるのか?と聞くと、ただただ「チクショウ、何で・・・」と呟くばかり。

きっと、何かある。 長年こんな世知辛い商売を営んできた私の感は、稲村が何か見に覚えのあることをしていると感じ取ったのだ。
しかし、正式に依頼をしてくれば、それは立派な依頼者だ。 狙われているのなら、助けなければならない。
今回の件を、身辺警護という形にて受件することにした。