「――助けてくれ」

5月某日、一本の電話から非常に狼狽した男の声がした。
そして、この電話がこれより私を奇妙な出来事へ誘う始まりのベルでもあったのだ。


事務所に来た男は、20代前半と思えた。思えたというのは、まだ少年らしさが残る顔つきであるにも関わらず、酷く憔悴しきった表情を浮かべていたからだ。
実年齢よりも、随分と老けて見えるのはそのせいだろう。

男は、稲村(仮名)と名乗った。

「助けてくれ・・・。もう、気がおかしくなりそうなんだよ・・。金は掛かってもいいから、俺が何でこんな目に遭うのか調べてくれ!」


虚ろな目でまくし立てる男を落ち着かせながら、とりあえず詳細を・・・と、状況を聞きだしてみることにすると、稲村はおもむろに口を開き始めた。