八王子にあるA中学校には、どこの学校にもあるような数々の幽霊話があった。
学校の立地は、深い森に囲まれ、校庭の一部をお寺に譲ってもらっていて、そばに墓地が見え、戦没者の石碑が近くにある・・・・・・。霊の出るシチュエーションはそろっていた。
根も葉もない怪談話を検証していくうちに、私は一つだけ気になる事実をつかんだ。
体育館の舞台下の倉庫に、両腕のない労務者の幽霊が出る、というのだ。用務員さんでも、生徒でもない。

さらに学校での聞き込みを続けると、平成三年、霊感の強いある二年生の女の子が、体育館で「霊を感じた」という話が出てきた。当時、うわさがうわさを呼び、霊が出てこれないように倉庫をクギで打ち付けただの、舞台にシミがあるだのとデマも数多く飛び交ったが、幽霊がなぜ労務者で、なぜ両腕が無かったのか、事実を知っている生徒は誰もいなかった。
私は情報の発信源にさかのぼろうと、卒業アルバムからその女の子を限定して、現在高校二年生になっている彼女に会いに行った。

彼女は、探偵が会いに来たということで、驚いた顔をしたが、本を出版するために調査していることを告げると、「本当なんです、信じてください!」と強く訴えてきた。当時は友達からウソつきよばわりされ、先生からもひどく怒られたと言う。

どんな体験をしたのか、くわしく聞いてみると・・・・・・。