●更新日 05/08●
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医療訴訟の実態   精神科医ヤブさんの日記





診察中の「音声だけ」を40秒間切り取り、それを被験者に聞かせて、「この医師が患者に訴えられたことがあるかどうか」を答えさせると、かなりの確率で正解したという実験がある。

また別の調査では、訴えられたことのない外科医は、訴えられたことのある外科医よりも、一人の患者につきあう時間が平均で3分以上長かった(前者が18分強、後者は15分強)。どちらも手術の技術やミスの回数には大差がない。たった3分長く患者と話すかどうかが勝負の分かれ目だったわけだ。

これらは海外での調査ではあるが、そうしたいろいろな研究をあわせて検討すると、どうやら医師が患者に訴訟を起こされるかどうかに最も影響するのは、

「診断や治療の正しさより、診察態度」

ということのようだ。



ここで日本に目を向けてみると、ここ最近の医療訴訟は一時期に比べてそう目立たない。ある時期には、「こんなことで訴えられていたのでは仕事にならない!」と言いたくなるような訴訟が頻発し、医師なら誰もが「裁判官の頭はどうかしている」と思う判決がたくさん下されていた。それが今かなり下火になっている。なぜだろう。

医師の技術が進歩したから?

それとも上記したように医師の態度が良くなったから?

確かにそれもあるかもしれないが、医療訴訟で主に医師側の弁護を引き受けている弁護士が言うには、「弁護士が借金の過払い金請求訴訟で忙しいから」という理由も大きいようだ。

その弁護士曰く、

「弁護士にとって借金の過払い金請求は実に美味しい仕事で、手付金無料で引き受けるところもある。医療訴訟は裁判での勝訴率が低いとは言うものの、実は裁判にまで持ち込まず和解になっているものが5割もある。和解によって原告が得したかどうかに関わらず弁護費用を受け取る弁護士としては、充分にうま味があるんだよ。ただ、やはり過払い金請求と比べると手間暇も知識も要求されるので、まずは過払い金請求のほうからかな。」

とのことである。



そして、彼は最後に、

「過払い金請求の案件が減ったころ、また医療訴訟が増えるだろうと言われていますよ」

と笑うのだった。



ちなみに、日本の多くの医師や病院が「医療訴訟保険」(正式には医師賠償責任保険)に入っているが、その保険料は多くが年間5万円程度である。一方アメリカはどうかというと、医師一人あたりの年間保険料が1000万円(誤字ではない、1千万円である)を超えることが当たり前で、中には保険料が2000万円にも達する診療科やポストがあるらしい。その分、医師の給与は高くなり、患者の負担はどんどん増え、病院にかかれない人も出てきている。

日本でもイチャモンに近い訴訟やトンデモ判決を続けていれば、いつかアメリカと同じようになってしまうだろう。



精神科医ヤブ 精神科医ヤブ


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