●更新日 05/20●


判決編


(判  決)

被告:を無罪とする。


(理  由)
A子の体の傷跡は、左右の前腕部に各1箇所、及び、右太腿部に2箇所。計4箇所が認められる。
これらは医師の診察結果から「火のついた煙草を押し付けられたことによる火傷である」とほぼ断定され、原告は「これらの火傷は被告:Eの加害によるものである」と主張する。

しかし、その根拠はA子の証言のみである。

A子は現在6歳の女児であり、その証言の信用性については慎重に検討する必要がある。

A子は児童相談所に収容された以降は、一貫して「Eに火のついた煙草を押し付けられた」と主張しているものの、その主張に至るまでに
1.これは転んでできた傷。
2.お母さん(M)の煙草の火が当った。
3.お母さん(M)が間違って煙草の火を落とした。

など、その証言は二転三転している

この証言の変遷を原告の主張の通り「A子が虐待者(E)に脅されていたため事実を告げることができなかったため」とするならば、なるほど合理的に説明できる。

しかしながら、A子は証言の変遷の途上において「(火傷は)お母さん(M)によるもの」との旨を述べている。
すなわち、A子は、保護者であり最も近しい人物であるはずの母:Mを加害者とする証言の後、翻ってEを加害者とする証言を述べていることになる。
この変遷は極めて不自然であり、その証言の信用性を大いに損なうものである。

一方、A子の母:M、及び、Eは「火傷のことは知らなかった。気がつかなかった。」と一貫して述べている。
これについて原告は「風呂にも一緒に入り、A子の裸と接する機会が多いMとEが火傷に気付かなかったことは不自然である」と主張する。

しかしながら、A子の体にはその他にも多くの傷や痣があり、これらにまぎれて問題の火傷に気付かなかったという可能性は否定しえず、MとEの供述は必ずしも不自然とは言えない。

その他、MとEは「A子から火傷のことを告げられたことはなかった」とも供述しており、この点についてA子の証言は曖昧に終始している。
これについて原告は
「・A子は生来、我慢強い性格であった。
 ・Eによる加害を、交際中であった母に告げることがはばかられた。
 ・虐待者であるEによって口止めされた。
などの理由により、A子は火傷のことを告げることができなかったのだ。」

と主張する。

しかしながら、A子の火傷の程度はUD(深真皮熱傷)であり、その傷は化膿・悪化していた。
すなわち、A子は相当大きな痛みを継続的に感じていたはずであり、これを母親であるMにも告げないということは明らかに不自然である。

以上を総合すれば、A子の証言には氷解し難い疑問点が多々あるといわざる得ず、その証言に基づいた「Eが煙草の火を押し付けた」という原告の主張を認定することはできない。

よって、被告:Eを無罪とするものである。



いかがだったでしょう?
子供好きな方からすると、歯軋りしたくなるような判決だったのではないでしょうか?

6歳の女の子が自分で煙草の火を押し付けるわけはありませんから、どう見たって「誰かが火のついた煙草を押し付けた」ということなのですが、その加害者を特定する ことは6歳の女の子にとって、あまりに荷が重すぎた、ということのようです。

証拠がなければ、どんな加害者も罰することはできず、どんな被害者も救うことができない。
本来、裁判とは非情なものなのかもしれませんね。



特捜班:九坪




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