●更新日 03/19●


豪邸に捨てられた子〜2歳児ネグレクト事件〜


2歳の男児が食事も与えられないまま遺体で見つかり、その母親、島村恵美容疑者(29)保護責任者遺棄容疑で逮捕された事件。

島村恵美容疑者が居住していたマンション

現在までの情報を時系列順に整理してみる。
3年前  島村容疑者が祖父母宅に住み始める。
     この頃、夜中に子供の激しい泣き声が聞こえ、パトカーがやってくる
     騒ぎがあった。泣いていたのは長男であった。

2年前  島村容疑者、双子を出産。
     祖父母宅に、祖母、長男、双子の次男と長女の5人暮らしとなる。
     
     事件当時、島村容疑者の祖父は入院中、父母は近所のマンションで
     別居、内縁の夫は単身赴任中だった。

平成17年
0月某日 次男、病気のため入院。
      診察した病院は、次男の体のアカや臭いがひどかったため「ネグ
      レクト(児童虐待)の疑いがある」
として児童相談所へ届ける。

      届けを受けた児童相談所は4回にわたって島村容疑者を訪ねるが、
      インターホン越しに「来るな」「迷惑だ」などと断られ7回に
      わたって電話するも家庭訪問は受け入れられなかった。
      このため実態が把握できず、警察への連絡もしなかった。

平成18年
1月17日 警察に「子供の泣き声がする」との通報が立て続けに2回入る。
      警官がパトロールするが、問題の家を特定できない。
      その後、警察はチラシを配るなどし、情報を募る。

  20日 「(問題の家は)島村さんの家ではないか」との情報が寄せられる。
      警官が尋ねると島村容疑者の祖母が「幼稚園に通うひ孫が夜泣きを
      して、困っている」
と答える。
      警察官は「虐待などの心配はないだろう」と判断。祖母に「良く面倒を
      みて欲しい」と伝えて立ち去る。
      島村容疑者へは連絡せず。

1月〜2月 この頃、近所の人が「ママー」「さむいよー」などの子供の泣き声
      を聞いている。
      毎晩のように「ママー」「あけてー」「ごめんなさい」など、
      子供の泣き叫ぶ声が聞こえたとの話がある。

3月 3日 島村容疑者、祖父宅近所のマンションへ一人で転居
      3人の子供は祖父母宅に置き去られる。
      転居の原因は、子供の世話をしない島村容疑者に祖母が怒ったためと
      言われる。

   7日 警察はこの日までに「子供の激しい泣き声がする」との通報を2回
      うけていたが、この日、3回目(最後)の通報がある。
      この日以降、通報は無く、子供の泣き声を聞いた人はいない。

  13日 島村容疑者が祖父母宅に顔を出す。
      3人の子供の様子を見たところ、長女が衰弱しきっていたため、119番
      へ通報して入院させる。

      長男は引き取り、マンションへ連れていく。
      次男は放置。

  14日 島村容疑者が近所のマンションに住む両親に電話。
      「次男がひっくり返っているから見に行って。」
      「もう死んでいるかもしれないから。」

      合鍵を使って部屋に入った父親が次男の遺体を発見。警察に通報した。

      警察が踏み込んだところ、12畳の洋室内にはコンビニの空き袋が散乱
      し、次男は布団のなかでうつぶせに倒れていた。
      
      <のちの司法解剖の結果>
       発見時の次男の体重は約10s。胃に内容物なし。
       外傷はなし。顔と背中の一部が茶褐色に変色。

       死亡推定時刻は3月7日ごろ。

      
  15日 警察は島村容疑者を保護責任者遺棄の疑いで逮捕。
      逮捕後、島村容疑者は「10日間ぐらい食事を与えていなかった」
      供述、容疑を一部認める。その他
      「ほかにも面倒を見る人はいた。わたしだけの責任ではない。」
      「育児ノイローゼだった。」などとも供述している。

      祖母は「子供らのいた部屋とは玄関が別々で、二男らの様子に気づか
      なかった。」
と話している。

島村恵美容疑者の「島村家」は、市から産業廃棄物処理を請け負う大手清掃業社を営んでおり、地元でも有名な資産家である

同「島村家」

近所に駐車中の清掃車

なお、一部に『同清掃業者は「ファッションセンターしまむら」の大株主』との情報があるが、これについては、どうやら別会社である模様。
また、同清掃業社所有のマンションのひとつが、かの「女子高生コンクリート殺人事件」の犯人が、再犯を犯した際の被害者監禁場所であったことは、今のところただの奇縁というべきであろう。

ともあれ、今回の事件の現場となった「島村家」は1000坪以上ある「豪邸」
3階建、3世帯住宅。3階部分だけでも8部屋あり、それぞれが完全独立世帯住宅
各部屋は鍵付きの鉄扉で仕切られている。

同「島村家」玄関

インターホンも3つが設置

同家について付近の住民に話を聞くと、

「お婆ちゃん(容疑者の母)が子供と一緒のところを見たことがあるけど、家の外で座ってて、携帯電話で話しながらタバコ吸ってて、どう見たって品がない感じだった。」

「あの家は他にもマンションを幾つか持ってて、お金はもってるんですよね。でも、あんまりいい印象はないねえ。娘さんは遊び歩いてたみたいだし。大金持ちだから甘やかされてたんじゃないのかしら?」

「近くのマックにお婆ちゃんと娘と子供で行っているのを見たことがあるけど、下品な感じでしたよ。なんだか躾がなってない家族っていう感じだったお金を稼ぐことしか考えなかったんじゃないの? この立派な家も、悪いけど私たちは「ゴミ御殿」って呼んでるよ。」

などの証言。
どうやら、「豪邸に住む資産家」という社会的高地位とは裏腹に、その人物については酷評されていた様子だ。

取材に応じる付近住民

不可解な点は幾つかあり、例えば、上に記載した「3月13日」の島村容疑者の行動。
この日、島村容疑者は現場である祖父母宅を訪れており、長女を入院させ長男を引き取っているが、次男は放置したとしている。
しかし、次男の死亡推定時刻は「3月7日」。
島村容疑者は、すでに死亡していた次男を見ているはずなのだ。

なのに、なぜかその場では何もせず、後日両親に「様子を見に行ってくれ」と連絡している。
いったい、何を思っての行動なのか?
また、近所で通報されるほどの子供の泣き声があったにも関わらず、同居の容疑者祖母は、なぜ子供らを放置していたのか?
事件の経緯のなかで、島村容疑者の夫や両親の介入がほとんどなかったのは何故なのか?
そもそも、島村容疑者は何を考えて子供らを放置していたのか?
未だ解明すべき点は多い事件である。

ただ、ひとつ確かなのは、罪のない幼い生命が、裕福な家庭のなかで見殺しにされてしまったということである。

子供らにとってそこは「豪邸」という名の「監獄」だった。

「お金」と「幸福」をイコールで結べるほど世の中は単純ではないようだ。



特捜班



◇上記のタグを自分のサイトに張ってリンクしよう!


探偵ファイルのトップへ戻る

前の記事
今月のインデックス
次の記事