●更新日 11/15●


夜間救急 病院の悲鳴


先日10日、埼玉医科大総合医療センターが、休日夜間の軽症の救急患者に対して、時間外特別徴収金として8400円を患者自身に負担してもらうことを計画している。とのニュースが各メディアにより報道された。



このニュースに対して「必要な医療がうけられなくなく」「軽症だと思って我慢して、大事に至ったらどうするんだ」「誰もが健康保険で治療を受けられる、国民皆保険を揺るがす問題だ」といった批判もでたが、いったいどのような経緯で時間外特別徴収金を導入しようということになったのか。

そこには現在の「夜間救急」病院がかかえる大きな問題があった。

今回の当事者である、埼玉医科大学救急医療センター事務次長の諸田氏に話をうかがった。



今回、特別料金導入を計画した最大の理由。

それは年に4万人もの夜間休日救急患者の数、特に軽症救急患者の数を抑えたいということがあります。

現状では「夜間救急」の意味を勘違いされた患者さんが、
指先をヤケドして水ぶくれができた」「ものもらいができた」「昼は会社があるからこれない」「昼から腰が痛かったので我慢していたが、夜にやっぱ我慢できないと思ってきた
などと、「夜も診断してくれる24時間営業のコンビニ病院」の様な感覚で来院されます。

病院としては、昼にできる診療は昼にやりたいので、明らかに軽症の患者さんには、昼に診るので一旦帰宅する様にお願いするのですが、患者さんからは「そんなハズはない!精密検査をしてくれ!」と言う要求が多く、夜中に無駄なCTやレントゲンをとったりもします。
また、あくまで夜間は「救急」なので応急処置を主として、薬なども一日分しか処方できず、翌日昼の診療時間にまた来る様にと患者さんに伝えるのですが、患者からは昼と同じ診療・処方を求められ、それが大きな負担となっているのが現状です。

夜間救急は重症患者を優先して見るもの。
救急車で運ばれてきて、そのまま手術に入る事もあります。



夜間は医師の数(特に専門医)は限られるので、軽症の患者さんを数時間待たす事も有り、ようやくオペが終わり診療に戻っても、待たせた患者さんからは「なぜこんなに待たせるのか!」等の抗議をされ、それがさらに医師を疲れさせる。

それでも、うちは、夜間に来院する患者さんを拒んでいなかった為、更に来院する方が増えてしまいました。
そういった負担が増え続けた結果、医師が耐え切れずに辞め、その結果、残った医師の負担がさらに増えるという悪循環になってしまったのです。

また、当院では、一次(入院や手術を伴わない医療)、二次(入院や手術を要する症例に対する医療)、三次(二次救急まででは対応できない重篤な疾患や多発外傷に対する医療)の救急患者を受け入れています。
一次、二次の患者を受け入れられる夜間病院は同じ川越市内だけでも10ヵ所以上はありますが、うちの病院の様に、すべての科において夜間診療できる病院はないので、結果、特に当院に集中してしまい、医師の負担を押し上げているという現状もあります。

こういった問題から、時間外特別料金を検討することにしたが、今はまだ検討段階なので、いつから実施するかも、本当に実施することになるかもわかりません。
実施に至るまでに、トラブル防止の為にしっかりとした取り決め、ライン引きをしたいと考えています。

そして、本来の夜間救急病院としての役割をしっかり果たせる様にしたいと思っています。



今回、時間外特別徴収金を検討するにいたった理由。

いや、それだけにはとどまらない。

近年叫ばれる医療崩壊と呼ばれる事態を引き起こした理由。

それは病院、医療というものを単なるサービスと考え、己の要求ばかりを突きつけ続けた我々患者自身にあるのではないだろうか。

我々は、己が望む医療を受けるため、今一度「医療」というものに対して認識を改めるべきである。



大住+あさみ



※おまけ:ちなみに時間外特別徴収金8400円のうち400円は消費税とのことです。
なんでこんな半端な料金か納得できてすっきり。



◇上記のタグを自分のサイトに張ってリンクしよう!


探偵ファイルのトップへ戻る

前の記事
今月のインデックス
次の記事