●更新日 09/27●


笑顔管理社会の到来か?オムロン笑顔測定器


個人の笑顔の度合いを測定する装置をオムロンが開発し発表したところ、「社員に対する企業の過剰介入につながるのではないか」という批判が出ている。

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オムロン株式会社は9月5日付で、この装置についての発表記事を自社HPに掲載した。その内容を、以下に引用する。「オムロン株式会社は、カメラで撮影された人の顔画像から笑顔度を測定する「リアルタイム笑顔度測定技術」を開発しました。本技術は、画像の中から顔を見つけ出し、笑顔度合い(笑顔度)を0から100%の間で自動測定するものです。本技術は、10月2日(火)から10月6日(土)まで幕張メッセで開催される「CEATEC JAPAN 2007」に出展し、カメラで撮影した顔画像の横に笑顔度をリアルタイムに表示するデモンストレーションを行います。」

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また、この技術の利用可能性について、HPでは次のように記している。「本技術は、デジタルカメラで人物を撮影する際に最も良い笑顔で撮影することや、ロボットが人の表情を読み取ることで人とロボットのより高度なコミュニケーションを実現すること、また接客業向けの笑顔チェッカーなどへ応用することが可能です。」

ところが、これに対して、「このような技術は結局のところ、企業が社員の笑顔を監視し管理する技術として利用されるだけではないか。企業に限らず、監視社会の中で、あらゆる可能性を想定できる危険なものではないか」という意見が出されている。この意見を述べているのは、あるNGO関係者なのだが、本人に取材を申し込んだところ、「あくまでも個人的な見解で、現時点では私たちの組織としての公式見解ではないので、これ以上述べることはない」との回答しか得られなかった。そこで、こうした意見が出ていることについて、オムロンに問い合わせてみた。

――このような批判については、ご存知でしたか。また、批判を予想していましたか。
(社員)知りませんでしたし、予想もしていませんでした。
――笑顔を測定する技術については、各企業からの問い合わせ等はありましたか。
(社員)ありました。
――笑顔の度合いを測定するという行為自体が問題だ、ということについてはいかがですか。
(社員)ビジネスにおいて使うことも想定してはいましたが、あくまでも人と機械とのベストマッチングを目標として作りました。機械がその人に合わせるという、最適サービスを目指すものです。
――利用者は、貴社の意図と異なる使い方をする可能性もあるのではないですか。
(社員)笑顔について、悪用されるとはあまり考えていません。


両者の見解について、コミュニケーション論を研究する社会学者に話を聞いてみた。

「開発側の気持ちは分からなくもないですが、ある種のオプティミズム(楽観主義)ですね。逆に、監視社会につながるという意見も行き過ぎだとは思いますが。むしろ、現状での利用可能性がどんなものか、しっかり考えるべきでしょう。現在、社会学では「感情労働」についての研究が盛んです。感情労働とは、フライトアテンダントや看護師、ホームヘルパーといった、本人の感情の管理を伴う職業での作業や接客のことです。このような労働が増加している社会状況や、それに携わる人々の心理的な負担が問題になっています。笑顔度の測定は、感情労働の質的管理にも用いられる可能性があるように思えます。」

この技術の利用範囲が広いという点では、それぞれの見解は一致しているようだ。マクドナルドでも将来的には、笑顔度の高いスマイルが有料になったりするとしたら、いい迷惑だが・・・。



高橋



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